高PSRRと高速過渡応答を両立する車載用LDO:低消費電流化も実現
エイブリックは車載用高耐圧LDOリニアレギュレーターIC「S-19222シリーズ」を発表した。リップルノイズを除去する性能が高く、入力電圧変動時の過渡応答が高速なため、入出力コンデンサーを小さくでき、部品の小型化に貢献する。低消費電流も実現した。
エイブリックは2023年9月6日、車載用高耐圧LDOリニアレギュレーターIC「S-19222シリーズ」を発表した。
ハンドルの回転検知を行うトルクセンサーなど、車載機器の電圧制御に向けた製品。PSRR(電源電圧変動除去比:Power Supply Rejection Ratio)は75dBだ。入力電圧は3.0〜36.0Vで、出力電圧は1.8Vから6.0Vまでの7段階が選択できるほか、抵抗を追加すると1.8〜30.0Vの範囲内で調整できる。出力電圧精度は±1.5%。低温/常温/高温の3種の温度テストを実施し、車載用半導体の信頼性試験基準「AEC-Q100」にも対応予定だ。パッケージは高放熱タイプのTO-252-5S(A)や小型のSOT-23-5など5種類をそろえている。サンプル価格は159円(税別)。
高PSRRと高速過渡応答で小型化に貢献
LDOの入力電圧は直流電圧にリップルノイズが重畳され、外付けのコンデンサーの容量を大きくすることで緩和する場合が多い。また、自動車のエンジンを始動する際など、入力電圧が変動するとアンダーシュートやオーバーシュートが発生する。これも入出力コンデンサーの容量を大きくすることで対策できるが、部品が大型化してしまうという課題がある。
S-19222シリーズはこうした課題を解決するものだという。LDOのPSRRが高いと、大型のコンデンサーを使わずにLDO自体でリップルノイズを除去できる。S-19222シリーズのPSRRは75dB(1.0kHz時)で、リップルノイズを5623分の1に抑制できる。エイブリックの従来品と比較して45dB改善したという。
入力電圧変動時の過渡応答も高速化した。アンダーシュートとオーバーシュートはともに従来品の約60分の1に低減し、大きい入出力コンデンサーを使うことなく出力電圧の変動を抑えられる。
「36V動作で消費電流30μA以下のLDOリニアレギュレーターICとしては、PSRRは業界最高、過渡応答は業界最速だ。入出力コンデンサーを小さくできるので、部品の小型化とコストダウンが実現する」(エイブリック)
高PSRRと高速過渡応答は、低消費電流とトレードオフの関係にあるが、S-19222シリーズは「エイブリックが得意とする低消費電流化の技術と回路設計の見直しにより低消費電流化を実現した」(同社)という。ECUの暗電流を削減することで、“バッテリー上がり”が起きにくくなる。
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