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廃棄される「ズワイガニ」が半導体材料に、東北大学らが発見:n型半導体特性を確認(2/2 ページ)
東北大学は2024年3月25日、カニ殻から得られるキトサンのナノファイバーシートが、直流/交流変換、スイッチング効果、整流作用などの半導体特性と蓄電効果を発現することを発見したと発表した。
バイオエレクトロニクスの実用化に貢献
ACインピーダンス特性を測定したところ、低抵抗と高抵抗の2つの半円を持つナイキスト線図を確認した。2つの半円を原子間顕微鏡で観察したところ、それぞれ120〜350nmの針状や球状の甲殻類外骨や細胞壁組織からの寄与と推察され、このナイキスト線図の特性から、キトサンナノファイバーシートはDCおよびAC電流領域での等価回路を持つとした。
半導体特性の電子の起源を解明するためにESR解析を行ったところ、アミニル N●H 基の不対電子ラジカルを示すESRスペクトラムを観測した。その結果、キトサンの生成電子は、スペクトル強度の線図が横軸と交わる磁場のg値から、アモルファスキトサンに生ずるアミニルN●Hラジカル起因の電子であると考えられる。
電子の起源としてアミニルN●H基の不対電子ラジカルを示すESRスペクトラム(左)、β-1,4結合グルコサミン基とN●Hアミニル基を持つムコ多糖類ChNFの分子構造(右)[クリックで拡大] 出所:東北大学
同研究グループは、既に植物性ケナフを原料とするセルロースナノファイバーに同様の特性を発見している。今回発表した動物性キトサンの結果と組み合わせることで、自然界に広く賦存するバイオ素材による半導体作製、ペーパーエレクトロニクスの実用化などへの貢献が期待できるとした。
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