21個の新しい有機固体レーザー材料をわずか2カ月で発見:九州大学など5つのラボが協力
九州大学とトロント大学、バンクーバー大学、イリノイ大学および、グラスゴー大学の5ラボが協力し、1000個以上の分子を2カ月という短期間で合成、評価し、その中から21個の新しい高性能有機固体レーザー(OSL)材料を発見した。
トロント大学で開発された「自動運転ラボ」を材料探索に利用
九州大学は2024年5月、トロント大学やバンクーバー大学、イリノイ大学および、グラスゴー大学の5ラボが協力し、1000個以上の分子を2カ月という短期間で合成、評価し、その中から21個の新しい高性能有機固体レーザー(OSL)材料を発見したと発表した。今回の材料探索にはトロント大学で開発された「自動運転ラボ」を利用した。
有機光機能材料を開発するには、分子設計/合成と物性/デバイス特性評価の両面を統合した複雑なワークフローが必要だといわれている。ところが、ほとんどの場合、必要な専門知識や研究インフラが、複数の場所や時間帯に分散している。こうした課題を解決するには、データ転送やAI(人工知能)に基づく分子設計、ロジスティクス管理のため、グローバルにアクセス可能な中央クラウドハブが必要となる。
そこで今回は、分子探索時における合成ボトルネックを解消するため、ビルディングブロックベースの戦略を採用した。反復的な鈴木・宮浦カップリングを利用して、モジュラー前駆体から有機レーザー分子を合成するための2段階ワンポットプロトコルを開発した。
高い光増幅材料候補群を形成するためビルディングブロックの組み立ては並列化し、異なるロボット合成プラットフォーム上で自動化した。そして、自動テストワークフローにより、定常状態および時間分解分光法による溶液相の光学特性評価を行いながら、材料の高純度化を進め、安定した光増幅(レーザー)特性を確保した。
これらの実験結果は、クラウドハブの機械学習ベースに送り、量子化学シミュレーションから得られた物理的知識と統合するなどして、材料の絞り込みを行った。5つのラボが分子設計から合成、物性評価までをシームレスに連携することにより、今回は21個の新規有機レーザー分子を発見することができたという。
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