「NVIDIAの時代」の到来 売上高1000億ドル企業の誕生か:湯之上隆のナノフォーカス(73)(3/3 ページ)
NVIDIAが絶好調だ。直近の決算では64.9%という驚異の営業利益率をたたき出している。本稿では、NVIDIAの年間売上高がいずれ1000億米ドルに到達する可能性が高いことを、HBM(広帯域幅メモリ)やインターポーザの進化の視点で解説する。
年間売上高1000億米ドル企業の誕生か?
半導体の価格は、需要と供給のバランスで決まる。供給過剰になれば価格は暴落し、その一方、供給不足なら価格は高騰する。
NVIDIAのGPUは供給不足が続いており、その結果、2024年5月末時点で、「H100」搭載のグラフィックボードが550万円というべら棒な価格となっている(価格.com)。そして、次世代のH200やB200は、インターポーザのさらなる巨大化のために、もっと高価格になるかもしれない。実際に、NVIDIAのBlackwell B200 GPUは1台あたり約1100万円で販売する可能性がうわさされている(GAZLOG)。
このように、NVIDIAのGPUの価格が下がる要素は見当たらず、今後も値上がりする可能性が極めて高い。となると、NVIDIAの業績は今後も高成長が続くことになる。
図8は、主な半導体メーカーの売上高推移を示したものである(なお、NVIDIAの2023年の売上高は2023年4月期から2024年1月期の合計とした)。NVIDIAは、並み居る半導体メーカーごぼう抜きして、TSMCに次ぐ2位に躍進した。そして、この勢いが続くのなら(続きそうだが)、2024年の売上高ではTSMCを軽く抜き去って1位となるだろう。
図8 主な半導体メーカーの売上高推移(NVIDIAの2023年は2023年4月期〜2024年1月期の合計値)[クリックで拡大] 出所:Gartner、IC Insights、IHS、電子ジャーナル『半導体データブック』のデータ、メディアテックから提供されたデータ、各社のIRデータ、Semiconductor Intelligenceのデータを基に筆者作成
では、NVIDIAの2024年の売上高はどのくらいになるのだろうか? 2024年1月期が221億米ドル、4月期が260億米ドルだった。NVIDIAは、次期(7月期)は280億米ドルと予想している。すると、ここまでの合計が761億米ドルとなる。
もしかしたら、NVIDIAの売上高は、2024年に1000億米ドルを超えるかもしれない。まさに、NVIDIAの時代の到来である。
筆者プロフィール
湯之上隆(ゆのがみ たかし)微細加工研究所 所長
1961年生まれ。静岡県出身。京都大学大学院(原子核工学専攻)を修了後、日立製作所入社。以降16年に渡り、中央研究所、半導体事業部、エルピーダメモリ(出向)、半導体先端テクノロジーズ(出向)にて半導体の微細加工技術開発に従事。2000年に京都大学より工学博士取得。現在、微細加工研究所の所長として、半導体・電機産業関係企業のコンサルタントおよびジャーナリストの仕事に従事。著書に『日本「半導体」敗戦』(光文社)、『「電機・半導体」大崩壊の教訓』(日本文芸社)、『日本型モノづくりの敗北 零戦・半導体・テレビ』(文春新書)。2023年4月には『半導体有事』(文春新書)を上梓。
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