大口径の人工ダイヤモンド基板量産に向け、OrbrayとElement Sixが提携:WGB半導体への応用に期待
Orbray(オーブレー)と英Element Sixは、戦略的提携を行うと発表した。両社の技術を持ち寄り、高品質でウエハースケールの「単結晶人工ダイヤモンド」を開発し、量産技術を確立することで、製品の安定供給を目指す。
それぞれが保有する知的財産と設備のライセンスを相互に提供
Orbray(オーブレー)と英Element Sixは2024年6月11日、戦略的提携を行うと発表した。Orbrayは宝石の加工や、人工ダイヤモンド/サファイヤなどの育成技術、Element Sixは人工ダイヤモンド材料ソリューションを手掛ける。両社の技術を持ち寄り、高品質でウエハースケールの「単結晶人工ダイヤモンド」を開発し、量産技術を確立することで、製品の安定供給を目指す。
高絶縁破壊電界や高熱伝導性といった特性を持つ人工ダイヤモンドは、今後の半導体材料として注目されている。こうした中でElement Sixは、直径が最大150mmで均一な多結晶ダイヤモンドの成長を可能にする「化学気相成長(CVD)プラットフォーム」を開発してきた。最近は、米国オレゴン州グレシャムにCVD施設を開設、高品質な単結晶ダイヤモンド製品の大規模生産を可能にした。
一方でOrbrayは、サファイア基板上に単結晶ダイヤモンドを成長させる独自のヘテロエピタキシャルプロセスを開発、直径55mmの大口径単結晶ダイヤモンドについて、量産技術を確立してきた。
単結晶ダイヤモンドに関する製造技術などを蓄積してきた両社は、それぞれが保有する知的財産と設備のライセンスを相互に提供し、大口径で高品質の単結晶ダイヤモンド基板についても量産技術を確立していくことにした。ちなみに、品質レベルの高いダイヤモンド基板はこれまで、直径10mm未満でしか製造できなかったという。
大口径で高品質の単結晶ダイヤモンド基板を安定供給できれば、WBG(ワイドバンドギャップ)半導体として、パワーデバイスやRFデバイスを始め、幅広い用途での導入が期待されている。
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