パワー半導体向けウエハー市場、2035年に1兆円台へ:24年にはSiCベアウエハーがSiを上回る
富士経済の調査によると、パワー半導体向けウエハーの世界市場は、2024年見込みの2813億円に対し、2035年は1兆763億円規模となる。特にSiC(炭化ケイ素)ベアウエハーは、2024年にSi(シリコン)ウエハーの市場規模を上回る見込みだ。
酸化ガリウムウエハーやダイヤモンドウエハー市場にも期待
富士経済は2024年4月、パワー半導体向けウエハーの世界市場が、2024年見込みの2813億円に対し、2035年は1兆763億円規模になると発表した。特にSiC(炭化ケイ素)ベアウエハーは、2024年にSi(シリコン)ウエハーの市場規模を上回る見込みで、その後もパワー半導体向けウエハー市場をけん引していくと予測した。
今回の調査は、Siウエハー、SiCベアウエハー、SiCエピウエハー、GaN(窒化ガリウム)ウエハー、酸化ガリウムウエハー、ダイヤモンドウエハー、窒化アルミニウムウエハーおよび、二酸化ゲルマニウムウエハーの8品目を対象とした。ただし、窒化アルミニウムウエハーと二酸化ゲルマニウムウエハーについては、市場規模を算出しなかった。調査期間は2024年2〜3月。
2024年のパワー半導体向けウエハー市場は、2023年に比べ23.4%の増加を見込む。Siパワー半導体の在庫調整などもあってSiウエハー市場が前年を下回る中で、SiCベアウエハーは56.9%も増加した。主なSiCベアウエハーメーカーが生産能力を増強したことで、Siウエハーの規模を上回る結果となった。
2025年以降は、自動車の電動化も進みSiCベアウエハー市場が引き続き拡大すると予測した。Siウエハー市場も回復する見込み。また、GaNウエハーの大口径化や、酸化ガリウムウエハーの量産開始なども増加要因となる。さらに、ダイヤモンドウエハーや窒化アルミニウムウエハー、二酸化ゲルマニウムウエハーなどの実用化が期待されている。
パワー半導体向けウエハーの口径別構成比についても調べた。Siウエハーは今後も8インチウエハーが60%以上を占める見通しだ。12インチウエハーはIGBTやMOSFETでの採用が進んでおり、特に車載用途のパワー半導体で需要が増加する見通し。
SiCベアウエハーは6インチが大半を占める。当面はこうした状況が続くものの、開発が進む8インチウエハーについても、2035年には構成比が13.3%に達すると予測した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- パワー半導体市場、2035年に7兆7757億円規模へ
富士経済は、パワー半導体とその構成部材、製造装置の世界市場を調査し、2035年までの市場予測を発表した。パワー半導体の市場規模は2023年の3兆1739億円に対し、2035年は7兆7757億円規模になると予測した。 - 半導体材料市場、2027年は586億米ドル規模へ
半導体材料の市場規模は、2023年見込みの465億米ドルに対し、2027年は586億米ドルに拡大すると予測した。2022年前半から始まった半導体デバイスの在庫調整が一段落し、2024年以降は半導体材料も需要が高まる見通し。 - HV、PHV、EV市場、2035年に7600万台規模へ
富士経済は、HVやPHV、EVの世界市場(乗用車、新車販売台数)を調査し、2035年における市場規模予測を発表した。これによると、HV、PHV、EV合計で、2022年の1402万台に対し、2035年には7600万台に達する見通しである。 - パワー半導体市場、2035年には13兆4302億円規模に
富士経済が2022年4月に発表した次世代パワー半導体とSiパワー半導体の世界市場の調査によると、パワー半導体市場は自動車/電装分野にけん引され、2035年には2022年比5.0倍の13兆4302億円規模に達するという。 - ルネサス甲府工場がいよいよ再稼働 柴田社長「パワー半導体の戦略的拠点に」
ルネサス エレクトロニクスは2024年4月11日、2014年10月に閉鎖した甲府工場(山梨県甲斐市)の稼働を開始した。パワー半導体の生産能力増強を目的としたもので、本格量産を開始する2025年には、現状比で2倍の生産能力になる見込みだ。 - 天野浩氏が語ったGaNパワーデバイスの展望 「エネルギー効率99%以上を目指す」
Si(シリコン)に代わる新しい材料として、SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)などのWBG(ワイドバンドギャップ)半導体が注目を集めている。名古屋大学教授でノーベル物理学賞受賞者である天野浩氏の講演から、GaN基板/デバイスの研究開発の現状と将来展望を紹介する。