「Apple依存」で得た教訓 ImaginationがRISC-Vに活路:顧客も製品も多様化(2/2 ページ)
英Imagination TechnologiesがRISC-Vコア関連のビジネスに力を入れている。2024年4月には、RISC-V CPUコアの新製品「APXM-6200」を発表した。Armコアからの移行が容易になるソフトウェアもそろえている。
「APXM-6200」でRISC-V移行の障壁を取り除く
APXM 6200は、Imaginationが2021年に発表したRISC-V CPU IPシリーズ「Catapult」の新製品となる。APXM-6200の特長は、単位面積当たりの性能を向上させた*)ことだ。キャッシュメモリを備えたシングルコアおよび、同じ製造プロセスノードで比較した場合、APXM-6200はArmのプロセッサコア「Cortex-A53」に比べて25%、「Cortex-A55」比では40%、それぞれ小さくなるという。システム性能評価のベンチマークであるSPECintでは、Armプロセッサよりも高いスコアを獲得したとする。「最も普及しているCortex-A53と比べても、単位面積当たりの性能は2.5倍を実現した。ArmプロセッサからAPXM-6200に切り替えることで、コストメリットをすぐに得られる」(Darashri氏)
*)「APXM」の「XM」は、Imaginationの製品群において「単位面積当たりの性能」を追求する品種であることを示している。
APXM-6200とImaginationのGPUコアを組み合わせることで、さらに効率のよい統合システム(CPU+GPU)を開発できるとDarashri氏は述べる。「われわれのGPUコアは、RISC-Vに準拠している。GPUのドライバー/ソフトウェアはRISC-V向けにポーティングが可能で、APXM-6200と組み合わせて使うために最適化されている。これにより、バスの利用効率が高く、メモリトラフィックが少ない統合システムを実現できる」(同氏)
Armコアから移行しやすいよう、ポーティングガイドを含め各種ソフトウェアも提供する。ImaginationのSDK(ソフトウェア開発キット)である「Catapult SDK」の他、MicrosoftのIDE(統合開発環境)「Visual Studio Code」向けの拡張機能「Catapult Studio extension」も提供している。Visual Studio Codeのユーザーはこの拡張機能を通常の開発環境にインストールできる。Catapult Studio extensionには、オープンソースのプロセッサエミュレータであるQEMU(Quick Emulator)やCatapultソフトウェアモデルが含まれているので、ハードの設計を待たずにRISC-Vソフトウェアを構築、実行できる。
ユーザーの懸念点として挙げていたセキュリティについても、OP-TEE(Open Portable Trusted Execution Environment)に対応することで、Arm「TrustZone」と同様の隔離実行環境を実現しやすいようにしているという。ProvenRunなどセキュリティソリューションベンダーが提供するTEEも使うことができるので、セキュリティ認証も容易に取得できるとする。
APXM-6200は、TVやSTB(セットトップボックス)、ロボティクス、ウェアラブル機器、マシンビジョンなど幅広いユースケースを想定している。
Imaginationは、Catapultファミリーの第1弾として、リアルタイム制御用のCPUコア「RTXM-2200」を2022年に発表した。今回第2弾としてAPXM-6200を発表。第3弾として、より高性能なアプリケーション向けのCPUコアも発表する予定だ。Darashri氏は、「ArmからRISC-Vへの移行は、x86からArmへの移行よりも恐らく速く進むだろう。数年後にはモバイル分野にも入っていくだろう」と語った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- MIPSが新CEOの下で戦略を刷新 RISC-Vに軸足を移す
MIPSアーキテクチャが市場に投入されてから、ことしでちょうど40年になる。その間、さまざまな浮き沈みを経験したMIPだが、2023年に就任した新CEOの下、新しい戦略を展開しようとしている。 - RISC-Vのソフトウェア強化に向けたプロジェクトが始動
Linux Foundationの欧州部門Linux Foundation Europeが2023年5月、「RISC-V Software Ecosystem(RISE)」プロジェクトの創設を発表した。Armの牙城を崩すべく、RISC-Vアーキテクチャ向けのオープンソースソフトウェア開発を加速させていく計画だ。 - 「RISC-Vは不可避の存在」、RISC-V Summit 2022詳報
RISC-V ISAの管理/推進を目指すコンソーシアム「RISC-V International」が2022年12月に開催した「RISC-V Summit 2022」について、当日行われた講演の内容や各社の最新開発動向などを紹介する。 - Wave Computingが破産、「MIPS」として事業継続へ
Wave Computingは、米連邦破産法11条の手続きを終え、MIPSとして引き続き事業を継続する予定であることを明らかにした。 - 米国の「意固地な」半導体規制は中国の自立を助長するだけ
米バイデン政権は、Huaweiに対する半導体の輸出許可を取り消す決断を下した。これに対し中国は強く反発。米中の分断はさらに深まると予測される。 - 「カスタムSoC市場2位」、ソシオネクストの成長戦略と先端SoC開発事例
ソシオネクストの会長兼社長である肥塚雅博氏が同社の成長戦略や開発事例などについて語った。