5G基地局周辺の電波強度、4Gと同等かそれ以下:電波ばく露レベルを複数地点で測定
情報通信研究機構(NICT)は、商用運用されている5G(第5世代移動通信)基地局周辺の電波強度を測定した。この結果、従来の4G(第4世代移動通信)レベルと同程度あるいはそれ以下であることが分かった。
FR1は都内および近郊51カ所、FR2は都心3カ所で測定
情報通信研究機構(NICT)は2024年7月、商用運用されている5G(第5世代移動通信)基地局周辺の電波強度を測定した。この結果、従来の4G(第4世代移動通信)レベルと同程度あるいはそれ以下であることが分かった。
NICTは、大規模な電波ばく露レベルの長期測定を2019年より実施してきた。測定方法としては、「定点測定」や「スポット測定」「携帯型測定器による測定」および、「電測車による広域測定」などを組み合わせることによって、データの偏りを抑えている。
今回の測定は、5Gに用いられている「3.7GHz帯/4.5GHz帯(FR1)」と「28GHz帯(FR2)」という2つの周波数帯を対象にした。測定場所は、FR1が東京都内および近郊 51カ所(51地点)、FR2が東京都心の3カ所(15地点)である。NICTは「公的研究機関が5G基地局周辺の電波強度を測定するのは世界で初めて」という。
FR1の測定にはスペクトラムアナライザと電界プローブを用い、国内の電波法施行規則で定められた測定手順に準拠して行った。FR2の測定は電界プローブの代わりに28GHz測定用アンテナを用いた。また、スマートフォンにデータをダウンロードしながら電界強度を測定した。この時FR1は6Gバイト、FR2は10Gバイトのデータを約1分間ダウンロードした。
測定結果によれば、データをダウンロードした時の電波ばく露レベルは、ダウンロードしなかった時に比べFR1で約70倍、FR2で約1000倍大きくなることが分かった。このケースでも、5G基地局からの電波ばく露レベルは、4Gと同等かそれ以下であることを確認した。いずれの場合でも、電波防護指針に対し中央値で約1万分の1以下と、極めて低いレベルであった。
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