大容量/発火リスクなし インフラを支える亜鉛二次電池:独自技術で高寿命化
日本ガイシは「TECHNO-FRONTIER 2024」にて、開発中の亜鉛二次電池「ZNB」を紹介した。エネルギー密度が高く、発火リスクがないことから、基地局などのインフラ設備のバックアップ電源として利用できるという。
日本ガイシは「TECHNO-FRONTIER 2024」(2024年7月24〜26日、東京ビッグサイト)に出展し、開発中の亜鉛二次電池「ZNB」を紹介した。
ZNBは、負極に亜鉛を用い、正極と負極を隔てるセパレーターに日本ガイシ独自のセラミックス技術を使用した蓄電池だ。
二次電池としてはエネルギー密度の高いリチウムイオン二次電池が多く用いられるが、可燃性の有機電解液を用いているため発火の危険性がある。一方、亜鉛二次電池は水系電解液を用いるため、安全性が高い。同様に水系電解液を用いている鉛蓄電池でも発火リスクは抑えられるが、鉛に有毒性があるためリサイクルがしにくい。亜鉛二次電池はリサイクル性が高いことに加え、エネルギー密度が鉛蓄電池の約2倍と大きい。
一方、亜鉛二次電池には寿命が短いという課題がある。充放電を繰り返すことで負極から亜鉛が析出し、正極との短絡が発生してしまうためだ。日本ガイシは、同社が得意とするセラミックス技術で正極/負極を隔てる水酸化物イオン伝導性のセパレーターを作成し、短絡を防止しているという。
基地局での実証も開始
こうした特徴から、日本ガイシはZNBがインフラ設備などのバックアップ電源に適するとしている。2024年4月にはKDDIの商用基地局向けバックアップ電源の実証に採用され、運転を開始した。停電時でも24時間以上基地局を稼働できるという。
日本ガイシは今後、ZNBの用途を公共施設や商業施設にも拡大していく計画だ。
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