自宅を売って夫婦で起業 CHIPS補助金獲得のMEMSメーカー:主力市場は航空宇宙/防衛分野(2/2 ページ)
米国オレゴン州メドフォードを拠点とするMEMSファウンドリーであるRogue Valley Microdevicesが、米国の半導体産業支援策「CHIPS and Science Act」(CHIPS法)に基づく補助金を獲得した。同社は米国にあるMEMSファウンドリー2社のうちの1社で、航空宇宙/防衛やバイオテクノロジー、情報通信分野で事業を展開している。
経営陣は6人中5人が女性、施設内に託児所も
Gomez氏は、男性中心の業界で女性である自身が目立つ存在であることは強みだと考える。
同氏は、「会社を立ち上げたとき、私は26歳だった。周りの人は、私が自分が何をしているのか分かっていないと思っているようだった。振り返ってみるとその通りだったと思う。人と違うことには、記憶に残りやすいという利点がある。そのおかげで、メンターや、快く指導してくれたり、必要なときには叱咤激励し、成功のために時間を割いてくれたりする人たちとつながりやすくなった」と語った。
Rogue Valleyは経営陣6人のうち5人を女性が占めていることも特徴的だ。
「半導体業界では、ジェンダー平等の促進は難しい課題だ。工学分野の大学を卒業する女性は多い。問題なのは、彼女たちが数年後に自らエンジニアの道を去ってしまうことだ。私たちはエンジニアのキャリアから離れて戻ってこない女性を多く見てきた」(Gomez氏)
Gomez氏によると、残念なことに、多くの女性エンジニアがいまだにキャリアか家庭かという選択を迫られているという。
「私たちは、Rogue Valleyの施設内に託児所を増設して、子どもの幼少期に親がそばにいられるような環境整備を計画している。私はRogue Valleyの最初の3年間、2人の赤ん坊を連れて出勤していた。従業員にも同じような機会を与えてあげたい」(Gomez氏)
ニューヨーク州のSuffolk County Community Collegeで2年制の学位を取得したGomez氏は、より高度な学位を取得することは考えていない。同氏は「大学の理事に任命された。最初に打診があったとき、『理事として私が必要だとは思えない。4年制の学位もないのに』と言ったのだが、大学側は『そんなことは関係ない』といった感じだった。それで『よし、たぶん大丈夫だろう』と思ったのだ」と語った。
300mmへの移行に期待
Rogue Valleyは、300mmウエハーへの移行によるコスト削減効果に期待している。
MEMS製造で使用される金/プラチナ/銀などの貴金属はCMOSデバイス工場を汚染する可能性が高いため、取り扱えるメーカーが限られている。Gomez氏は「現在、300mmウエハーで製造されたCMOSデバイスにプラチナや金の電極を追加したい場合、MEMSファウンドリーで加工を続ける前に、CMOSウエハーを200mmサイズに切断しなければならない」と説明する。Rogue Valleyの300mm MEMS工場は、CMOSデバイスとMEMSをウエハーレベルで統合するためのコストパフォーマンスのよい選択肢を提供するという。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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