病院の待合室で心臓検査が可能に? TDKの高感度磁気センサー:「胎児の心臓」を検査できる可能性も(2/2 ページ)
TDKと東京医科歯科大学は、磁気シールドのない通常環境で、MR磁気センサーを使った心臓活動の計測に成功した。今後、病院の待合室などでより手軽に心臓検査を行えるようになると期待する。さらに、心電図では難しい疾患の診断、胎児の心臓の評価などが可能になる見込みだ。
健常者40人、心房細動患者10人を対象に検証
実証実験では、健常者40人、心房細動(不整脈)の患者10人を対象に、東京医科歯科大学内の検査室に設置したSTORM systemで心磁図計測を実施した。STORM systemの磁気センサー部分に胸部を当てるように座り、2分間計測した。同時に、比較のために心電図(正確には心電図II誘導)も計測した。計測結果について、環境ノイズ除去の効果と、リアルタイムの心磁図波形で心拍を検出できているかの2点を検討した。
環境ノイズ除去効果の検討では、SNR(シグナルノイズ比)において、同時計測した心電図II誘導と同等レベルの35.0±5.2dBまでノイズ除去性能を向上させられたことが分かった。なお、今回行った検討方法では、きれいな波形を確認できる反面、不整脈のような疾患には適用できないという課題があるという。
リアルタイム心磁図波形での心拍検出可否を確認する検討では、99.9%という高い精度で心拍検出に成功した。
心房細動の患者10人を対象にした計測したところ、リアルタイム心磁図波形で心房細動の検出に成功した。心房細動は、日本で最も発症頻度の高い頻脈性不整脈といわれ、寝たきりの要因にもなるため、早期発見/早期治療が必要になる。
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 循環制御内科学分野 教授の笹野哲郎氏は、心磁図検査について「従来の心電図検査が苦手とする疾患の診断に役立つ検査方法ではないか。心電図検査の上位互換ではなく、補完し合うものだと考えている」と述べる。「センサー感度をより高めて背側での心磁図検査が実現すれば、『健康診断の待ち時間に椅子で心磁図検査を実施し、異常があった場合は心電図で詳しく検査する』ことが可能になるかもしれない」(同氏)
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