サブテラヘルツ波でコンクリ内の鉄筋腐食を評価:非破壊・非接触で構造物を検査
芝浦工業大学は、コンステックや東北大学と共同で、サブテラヘルツ波を用いコンクリート内部の鉄筋腐食状態を、非破壊、非接触で評価できる技術を開発した。構造物調査の実施率向上や予防保全型維持管理体系の構築を目指す。
測定装置の外形寸法は約200×300×200mm、重さは約5kg
芝浦工業大学の建築学部とデザイン工学部は2024年8月、コンステック、東北大学大学院工学研究科都市建築学専攻と共同で、サブテラヘルツ波を用いコンクリート内部の鉄筋腐食状態を、非破壊、非接触で評価できる技術を開発したと発表した。構造物調査の実施率向上や予防保全型維持管理体系の構築を目指す。
周波数が10G〜300GHz程度のサブテラヘルツ波は、コンクリートなどの非極性物質に対する透過性が高い。また、水などの極性物質には吸収され、金属に対しては高い反射性を持つ。こうした特性を住宅や建築物の予防保全に活用するための技術を開発した。
具体的には、7.5G〜20GHz程度のサブテラヘルツ波をコンクリート表面から入射し、コンクリートや鉄筋から反射してきた波の強度を測定し、鉄筋位置や腐食度を非破壊、非接触で評価する。かぶり厚み約50mmまでの鉄筋を評価できるという。
研究チームは、開発した評価技術を用いて構造物測定を行うための装置(近接評価用と遠隔評価用)を試作した。可搬性やセッティングに要する時間、腐食度評価の可能性、ポータブル電源による電源の安定供給、などを考慮して装置を開発した。外形寸法は約200×300×200mmで、重さは約5kgである。ポータブル電源を用い、400Whで約10時間の測定が可能だという。
実構造物への適用を視野に入れ、開発した装置によるコンクリート中の鉄筋腐食度の測定/評価フローも検討した。サブテラヘルツ装置のみで鉄筋位置情報を取得する場合と、電磁波レーダ装置を併用する場合に分けて測定すれば、鉄筋腐食の有無を判断したり、腐食開始初期における鉄筋の質量減少率を推定したりすることが可能となる。
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