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特定の色中心から選択的に「単一光子」を発生:量子暗号通信の性能向上が可能に(2/2 ページ)
京都大学と公立千歳科学技術大学および、シドニー工科大学の研究グループは、エネルギーが小さい励起光を用い、特定の色中心から選択的に「単一光子」を発生させることに成功した。この励起方法でノイズとなる背景光子を低減できることも実証した。
発生光子の単一光子性を評価
さらに、発生光子の単一光子性を評価した。遅延時間が0ナノ秒時の同時計数値は、波長532nmで励起すると0.53±0.02となった。これに対し、波長637nmのレーザー光で励起した場合は、0.08±0.05と小さくなった。この値は、0.5以下で単一光子源の条件を満たし、0に近づくほどノイズが小さい「良質の単一光子源」であることを示すものだという。
また、110Kから260Kまで温度を変化させた実験では、色中心からの発光強度が、hBN中のフォノンの量に比例することを確認した。同時に、フォノンのエネルギーが組み合わさることで、色中心の励起が行われていることを実証した。
今回の成果は、京都大学大学院工学研究科の岡城勇大修士課程学生、嶋崎幸之介博士課程学生、鈴木和樹修士課程学生(研究当時)、向井佑助教、竹内繁樹教授と公立千歳科学技術大学の高島秀聡准教授および、シドニー工科大学の共同研究によるものである。
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