スタートアップが世界を動かす原動力に、米国VCが重要性を語る:政府レベルの活動が必須(2/2 ページ)
Pegasus Tech Venturesの創設者兼CEOを務めるAnis Uzzaman氏に、75以上の国/地域のスタートアップが参加するビジネスピッチコンテスト「スタートアップワールドカップ」開催にかける思いや、世界のスタートアップの現状および課題を聞いた。
日本は「ソフトやAIで目立つ企業が少ない」
――スタートアップが取り組む分野や課題に地域性はありますか。
Uzzaman氏 地域によって明らかに異なる。北米ではAI(人工知能)関連に取り組む企業が多く、シリコンバレーで行われたスタートアップワールドカップの米国予選では8割が生成AI関連だった。また、発展途上国では、Eコマース関連など一般消費者向け製品(BtoCビジネス)関連が多い。日本では、ハードウェアやAI、ヘルスケア関連が多い印象だ。世界全体で見ると、AI関連が最も多く、次に素材/材料、電池などのクリーンテック、サイバーセキュリティ関連が多い。最近では、量子コンピュータや自動運転、FA(ファクトリーオートメーション)に取り組む企業も増えている。
メタバースやAR(拡張現実)/VR(仮想現実)関連では、開発に膨大な資金が必要なため、スタートアップの取り組みは追い付いていない。一方で、大手企業はハードウェアの開発を進めていて、ある程度のレベルまで進捗している。特に、Appleが2024年に発表した「Apple Vision Pro」の完成度が現存技術で最も完成度が高い。これも、多くの資金をつぎ込んだM&Aの成果によるものだ。
――日本国内の状況はどのように見ていますか。
Uzzaman氏 日本は、長年培ってきたハードウェア製造の技術が強みだ。一方で、ソフトウェアやAI関連で目立つ企業が少ない。AI分野のスタートアップではPreferred Networksが善戦しているが、グローバルでの競争で苦労している印象だ。国としてもAI関連の投資が少なく、国内のAIエンジニアを集めて国際競争力のある活動を行う様子もない。また、AIを使用する側の企業でも導入や活用が遅れている。国別のAIスタートアップ数および資金調達額のランキングでは、日本は294社/40億米ドルで8位にとどまっている。
生成AI基盤は、モデル層とアプリケーション層の大きく2つに分けられる。モデル層はAIの基盤となる技術で、アプリケーション層は、モデル層を活用して音声や画像、文書を作成するアプリケーション開発の技術だ。日本には、アプリケーション層に関わる企業は存在するものの、重要性が高いモデル層を開発する企業が非常に少ない。
生成AI市場は世界経済に大きな変化をもたらす可能性のある重要市場だ。自然言語処理を利用したツールがビジネスや社会に浸透すれば、10年以内に世界のGDP(国内総生産)の合計を約1050兆円増加させることができる。2023年の日本のGDPが591兆円だったことを踏まえると、非常に大きな市場だということが理解できる。日本は、政府レベルで生成AI活用に向けた活動に注力すべきだ。
――日本のスタートアップを盛り上げるために、どんな取り組みが必要ですか。
Uzzaman氏 世界中の投資家から資金を集めることが必要だ。日本政府は、国内発のユニコーン企業を生み出そうとしているが、そのためには多額の資金が必要で、ハードウェアでは必要資金が数百億円にも上る。現在、国内でも投資家が増えているものの海外に比べて規模が小さい。日本政府が主導して世界中の投資家に投資を促す必要がある。
また、スタートアップは、最初からグローバルを意識した事業を展開すべきだ。グローバルに目を向けて情報を発信することで、世界の投資家が注目し、資金調達がしやすくなる。そして、夢を実現するための方法も勉強してほしい。今は動画やSNSでいくらでも勉強ができる時代だ。英語などの語学も重要だ。英語を習得することで、得られる情報や人間関係の幅が広がる。高いスキルと良好な人間関係を築いて、初めて大きな夢の実現に向けて挑戦できるようになる。
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