AI技術でつながりやすいモバイルネットワーク実現:ネットワークの運用を高度化
富士通は、人工知能(AI)技術を活用し、モバイルネットワークの通信品質向上や省電力化を可能にしつつ、有事の際なども「つながりやすさ」を実現するアプリケーションを開発した。
「QoE向上」「省電力化」「通信品質維持」を実現する3つのアプリ
富士通は2024年10月、人工知能(AI)技術を活用し、モバイルネットワークの通信品質向上や省電力化を可能にしつつ、有事の際なども「つながりやすさ」を実現するアプリケーションを開発したと発表した。
富士通は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業である「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」の中で、ネットワーク運用を高度化するアプリケーションの開発に取り組んできた。開発したアプリケーションは、O-RAN仕様に基づく運用管理システム(SMO)「FUJITSU Network Virtuora Service Management and Orchestration」に搭載し、2024年11月より順次提供を始める予定。
開発したアプリケーションは、「AIでネットワーク品質をリアルタイムで推定し品質を維持する技術」と、「イベント開催時などネットワーク品質の劣化を未然に防止する技術」および、「基地局のカバーエリアを再設計して品質を維持する技術」の3つからなる。これによってモバイルネットワーク事業者は、トラフィック量に応じた適切な運用が可能となる。
具体的には、100Gビット/秒というRAN(無線アクセスネットワーク)のトラフィックに対応したパケット解析から、利用者単位、アプリケーション単位の統計データ(KPI)を算出し、そのKPIから特徴量を選択するだけで容易にアプリケーションごとのQoEを推定するAIモデルを生成する。これによって、利用者一人ひとりのQoEを正確に把握し必要なリソースを割り当てることができ、基地局1台当たりの収容利用者数を19%も向上できるという。
また、通信トラフィックの上昇をAIで予兆検知し、基地局を事前に起動させたり、停止させたりすることで通信品質の維持と省電力化を実現した。例えば、開発した予兆検知技術により、実証期間において99.8%の時間で利用者品質に影響を与えず、事前に基地局を起動できたという。
さらに、サービス品質の劣化については、単一セルでなく周辺セルとトラフィック傾向を比較してAIが判断する。これにより、適合率が92%以上という高い故障検知精度を実現した。少ない故障データでの「教師あり学習」や、「教師なし学習」にも対応している。
サービスへの影響度が大きいエリアを判定し、復旧を優先的に行うことでサービス品質の劣化も最小化した。一例だが、装置に異常が生じるとこれまでは復旧に1日程度かかっていた。これに対し開発した異常検知技術を用いれば1時間以内に復旧でき、利用者への影響を最小限に抑えることができるという。
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