CHIPS法支援金の「駆け込み分配」が進む? トランプ政権移行前に:給付の遅れをIntelも指摘(3/3 ページ)
米国では、2025年1月のトランプ政権への移行を前に、バイデン政権がCHIPS法支援金の分配を急ぐ可能性がある。
Elon Musk氏の影響力にも注視
トランプ大統領は中国の半導体に関税を課すと公言していて、貿易不均衡を是正するために関税率を上げてきた歴史があるとKoch氏は指摘した。
「われわれは、トランプ氏が最後までやり遂げることを期待している。米国の半導体メーカーは、関税をかけられた製品よりも価格で競争できるため、利益を得ることができる。これは特に、中国のサプライヤーが低価格の製品を市場に氾濫させている成熟した特殊用途に有益だ。これらの分野には依然として戦略的価値があり、米国の能力を維持することは国家安全保障にとって重要になる」
アナリストによると、米国とオランダや日本など半導体同盟国との間の摩擦は、トランプ政権下でのさらなる輸出規制によって悪化する可能性がある。3つの同盟国は、EUV(極端紫外線)リソグラフィなどの主要技術における中国への輸出規制を順守することで合意している。
台湾も注目されるだろう。
「台湾が米国の半導体産業を盗んだ」というトランプ氏の発言は、Teslaを含む米国企業が台湾中心のサプライチェーンに依存し続けている問題にどう対処するかについて、トランプ氏がアドバイザーに頼る必要があることを示唆していると、Triolo氏は分析する。
トランプ氏は、SpaceXとStarLinkを所有するElon Musk氏に政権の要職を与えると約束している。どちらも米政府の主要なサプライヤーだ。Musk氏は、TeslaがEV(電気自動車)を製造している中国とも密接な関係がある。これには眉をひそめる人もいる。
「トランプ政権で大きな影響力を持ち、中国、AI、半導体に焦点を当てているMusk氏とPeter Thiel氏を取り巻く保守系ベンチャーキャピタリストのグループは現在、影響力を増していて、これらも加わると、利害と課題が複雑に絡み合うことになる」(Triolo氏)。「Musk氏はまた、中国とテクノロジーの問題でトランプ氏に影響を与え得る潜在的に重要な立場にある。さらなるデカップリングに反対したり、紛争のリスクを高める可能性のある、台湾への支援強化の動きに反対したりといった具合だ」
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- Intelの資金難、Samsungの生産遅れ…… CHIPS法に危機
IntelやSamsung Electronicsなど、米国のCHIPS法が支援する大手半導体メーカーの生産に遅れが出ている。これは、米国政府の景気刺激策が期待通りの成果を上げられない可能性を示している。 - 中国勢の限界見えた? 主要スマホ向けプロセッサの競争環境
フランスの市場調査会社Yole Groupは、フラグシップスマートフォン用のアプリケーションプロセッサを調査し、「APU - Smartphone SoC Floorplan Comparison 2024(APU - スマートフォン向けSoCのフロアプラン比較 2024)」と題する研究の分析概要を発表した。【訂正あり】 - 世界半導体市場規模、24年9月も過去最高を更新
米国半導体工業会によると、2024年9月の世界半導体売上高は前年同月比23.2%増の553億米ドルとなり、過去最高を更新したという。 - 「お皿サイズの巨大AIチップ」を手掛けるCerebrasが上場へ
データセンター用の巨大なAI(人工知能)チップを手掛ける米Cerebras SystemsがIPO(新規株式公開)を申請した。ただし懸念もある。その一つが、売上高のほとんどをアラブ首長国連邦アブダビの技術メーカーG42を占めていることだ。 - 「欧州半導体法」で主導権争いに加わるEU 世界シェア20%を目指す
EUは「欧州半導体法」を制定し、半導体業界における競争力とレジリエンス強化を目指している。同法に基づいて430億ユーロの資金が調達される予定で、既に複数の工場や研究開発施設の建設プロジェクトが進行している。