新しい超伝導体「遷移金属ジルコナイド」を発見:超伝導体ではない2つの物質を固溶
東京都立大学や北海道大学、広島大学および、ローマ大学サピエンツァ校らの研究グループは、新たに合成した遷移金属ジルコナイドが、超伝導体であることを発見した。
TrZr2系における転移温度のさらなる上昇を目指す
東京都立大学や北海道大学、広島大学および、ローマ大学サピエンツァ校らの研究グループは2024年12月、新たに合成した遷移金属ジルコナイド(Fe1-xNixZr2)が、超伝導体であることを発見したと発表した。
研究グループは、超伝導体ではない「FeZr2」と「NiZr2」という2つの物質に着目。そして、これらの物質が溶解し均一な状態で固体となったFe1-xNixZr2を合成し、その結晶構造と物性を調べた。
実験では、多結晶試料をアーク溶解炉で合成し、X線回折によって結晶構造が連続的に変化していることを確認した。また、Fe1-xNixZr2における格子定数aおよびcのNi置換量依存性を調べ、Ni置換によってa軸が長くなり、c軸が短くなることが分かった。この現象は電子顕微鏡や光電子分光による元素分析でも確認できたという。
さらに、磁化率や電気抵抗率、比熱を測定し、超伝導特性を評価した。磁化率の温度依存性を示すデータから、Ni置換によって大きな反磁性シグナルが観測され、超伝導が発現することを確認した。また、x=0.6では2.8Kという転移温度を示しドーム型の超伝導相図が得られた。ドーム型の超伝導相図は、銅酸化物系や鉄系、ニッケル酸化物系の高温超伝導体でもみられるという。
磁化の温度依存性を室温まで測定すると、30K付近で磁化の異常が観測された。磁場中冷却(FC)とゼロ磁場中冷却(ZFC)のデータでも磁化の異常が確認されており、磁気秩序が生じている可能性があるとみている。現時点で磁性の詳細は解明されていないが、磁性体であるNiZr2の磁性が、Fe/Ni固溶によって弱められ超伝導が発現し、ドーム型の超伝導相図になっている可能性があるという。
今後は、NiZr2の磁性やFe1-xNixZr2の超伝導特性を詳細に研究することで、TrZr2系における転移温度のさらなる上昇を目指す。
今回の研究成果は、東京都立大学大学院理学研究科の島田竜之介大学院生をはじめ山下愛智助教、水口佳一准教授、北海道大学大学院工学研究院の三浦章准教授、広島大学先進理工系科学研究科の森吉千佳子教授および、ローマ大学サピエンツァ校のNaurang L. Saini准教授らによるものである。
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