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半導体露光装置から宇宙へ――京セラのセラミック材料、新市場で展開拡大:宇宙関連で売り上げ6倍目指す(3/3 ページ)
京セラは、低熱膨張性や高機械強度などの特性を有するファインセラミックスの一種「コージライト」を開発/提供していて、同材料は半導体露光装置のウエハーステージ用途で広く採用されている。同社はこの材料を生かせる新たな市場として、宇宙業界での展開を強化している。
「世界初」宇宙ステーションの小型光通信実験装置に載った
前述の通り、既存の低熱膨張ガラスを上回るさまざまな特長を有するというコージライトだが、宇宙産業では、新たな材料の採用において宇宙での実績を重視する傾向があり、採用はなかなか進まなかったという。
京セラは、各メーカーへの売り込みや展示会やカンファレンスにおける地道なPR活動を継続。そうした中で2024年6月、京セラは国際宇宙ステーション(ISS)に設置された小型光通信実験装置に、コージライト製のミラーとして「世界で初めて」(同社)採用されたことを発表した。ここではISSから地上への光通信の際、光を最適な角度に調節するためのミラーとして同社のコージライトが採用され、実際に低軌道上のISSから地上の可搬型光地上局への光通信を実現。神浦氏は、「この宇宙実績は一つの大きなターニングポイントだ」し、今後の採用拡大への期待を示していた。
京セラのファインコージライトミラーが搭載された光通信アンテナ(QSOL)を含む低軌道高秘匿光通信装置(SeCRETS)。[クリックで拡大]出所:京セラ(画像提供:国立研究開発法人情報通信研究機構、ソニーコンピュータサイエンス研究所、次世代宇宙システム技術研究組合)
宇宙産業は、2040年には100兆円規模に拡大するといった予測(モルガン・スタンレーによる)もあるなど活況だ。国際的な競争も加速していて、日本でも今後10年間で政府が総額1兆円規模の支援を行う方針の「宇宙戦略基金」が立ち上がった。京セラはこの成長市場での存在感を高め、宇宙関連の事業規模を2029年度に現在の5億円程度から、6倍となる30億円に拡大することを目指している。
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