「だいち4号」の観測データをLUCASで地上局へ高速伝送:大量のデータも一度で送信
宇宙航空研究開発機構(JAXA)とNECは、先進のレーダー衛星「だいち4号」(ALOS-4)と約4万km離れた「光データ通信衛星」間で、通信速度1.8Gビット/秒という高速光通信を行い、だいち4号で観測したデータを地上局へ伝送することに成功した。
1.5μmの波長帯を用いた光衛星間通信で通信速度1.8Gビット/秒を達成
宇宙航空研究開発機構(JAXA)とNECは2025年1月、先進のレーダー衛星「だいち4号」(ALOS-4)と約4万km離れた「光データ通信衛星」間で、通信速度1.8Gビット/秒という高速光通信を行い、だいち4号で観測したデータを地上局へ伝送することに成功したと発表した。
JAXAとNECは、1990年代から宇宙空間での光通信に取り組んできた。2024年10月には、光衛星間通信システム(LUCAS)の地球観測衛星用光ターミナル(OLLCT)を搭載した「だいち4号」と、静止衛星用光ターミナル(OGLCT)を搭載した「光データ中継衛星」との間で光衛星間通信を確立。その後、1.5μmの波長帯を用い、だいち4号の観測データを伝送することに成功した。
具体的には、LUCASを活用し北極からヨーロッパ、アフリカ大陸を縦断するよう、30分間にわたって「だいち4号」が観測した大容量のミッションデータをダウンリンクし、画像化した。同規模のデータを地上局へ直接伝送するにはこれまで、数回に分けて伝送していたが、LUCASを活用することで一度の通信で膨大な観測データを送ることが可能となった。
低軌道を周回するだいち4号は約7.6km/秒で移動し、高度約3万6000kmの静止軌道上にある光データ中継衛星は約3.1km/秒で移動している。しかも両者間は約4万kmも離れているという。こうした中で、相手衛星に向けて500m程度にしか広がらないレーザー光を正確に照射し続けるための高出力光増幅技術や、捕捉・追尾技術が求められるという。JAXAとNECはこうした課題を解決し、宇宙空間における大容量のデータ伝送を実現した。
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