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有機材料だけで作る太陽電池、光電変換効率を従来の2倍以上に新たな電極材料と作製手法を採用

金沢大学は、麗光やクイーンズ大学(カナダ)と共同で、光電変換効率(PCE)が8%を超える「全有機太陽電池」を開発した。このPCEは、これまでの全有機太陽電池に比べ2倍以上となる。

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光電変換効率のさらなる向上と製造コスト低減で早期実用化目指す

 金沢大学理工研究域物質化学系の中野正浩准教授らの研究グループは2025年2月、麗光やクイーンズ大学(カナダ)と共同で、光電変換効率(PCE)が8%を超える「全有機太陽電池」を開発したと発表した。このPCEは、これまでの全有機太陽電池に比べ2倍以上となる。

 地球温暖化対策の一環として、太陽光発電のさらなる普及が求められている。ところが、既設の太陽光パネルには有害な物質が含まれていることもあり、廃棄時の処理コストなどが課題となっている。

 こうした課題を解決するために提案されているのが「全有機太陽電池」である。ただ、現状ではPCEが極めて低い。シリコン型太陽電池の27%以上に対し、これまで報告されている全有機太陽電池の最大PCEは約4%である。PCEが低い原因は、電極の材料と作製方法にあった。

今回とこれまでに報告された全有機太陽電池のPCE比較[クリックで拡大] 出所:金沢大学
今回とこれまでに報告された全有機太陽電池のPCE比較[クリックで拡大] 出所:金沢大学

 そこで研究グループは、低温で作製できる有機透明電極の開発とカーボンナノチューブ電極のラミネート法を用いた作製手法を用い、PCEを向上させた。開発した透明電極は、導電性高分子の「PEDOT:PSS」をベースとしており、酸や塩基を用いずに80℃という低温で作製した。しかも、太陽電池の電極として十分な導電性(シート抵抗<70Ω/sq)が得られた。

 また、太陽電池デバイスの作製工程では、下層や基板を損傷させることなく多層膜を形成するため、金沢大学が開発した「カーボンナノチューブ電極のラミネーション法」を活用した。この方法は太陽電池の封止材上へ個別に電極を形成し、これを貼り付けることで電極を作製する。このため、カーボンナノチューブ電極を作製する時に用いる溶液プロセスによって、下層の有機材料が傷つけられることはないという。

フィルム型太陽電池デバイスの模式図[クリックで拡大] 出所:金沢大学
フィルム型太陽電池デバイスの模式図[クリックで拡大] 出所:金沢大学
太陽電池デバイスの電極作製時に、溶液プロセスで生じる下層膜の損傷例[クリックで拡大] 出所:金沢大学
太陽電池デバイスの電極作製時に、溶液プロセスで生じる下層膜の損傷例[クリックで拡大] 出所:金沢大学

 研究グループは今後、有機電極の導電性をさらに向上させ、PCEを高めていく。また、より低コストで製造可能な材料や手法の開発に取り組み、早期実用化を目指す。

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