ロームが25年に第3世代GaN HEMT量産へ TSMCとQoss改善:26年には8インチ化も
ロームは、650V耐圧GaN HEMTの第3世代を2025年に量産開始する。高いGaNプロセス技術を有するTSMCと共同で、スイッチング損失低減に関わる出力電荷量(Qoss)の改善に取り組んでいて、第3世代品では現行品からQossを大幅に削減する。また、2026年には、GaNパワー半導体製造の8インチ化も計画する。
ロームは、650V耐圧GaN HEMTの第3世代を2025年に量産開始する。高いGaNプロセス技術を有するTSMCと共同で、スイッチング損失低減にかかわる出力電荷量Qossの改善に取り組んでいて、第3世代品では現行品からQossを大幅に削減する。また、2026年には、GaNパワー半導体製造の8インチ化も計画。性能向上と同時にGaNデバイス普及における大きな課題であるコストの低減にも取り組む。
2022年に第1弾製品を発表して以降、GaNパワー半導体事業展開を加速してきたローム。GaN HEMTの第2世代品に関しては、2025年1月30日に、第2世代品搭載のTOLL(TO-LeadLess)パッケージ品「GNP2070TD-Z」の量産開始を発表したばかりだ。なお、GNP2070TD-Zは、オン抵抗と出力容量の相関を示すデバイス性能指標(RDS(ON)×Qoss)※)で「業界トップクラス」(同社)の数値を実現(右図)。これによって、「高耐圧かつ高速スイッチングが求められる電源システムのさらなる小型化と省エネ化に貢献する」としている。
※)Qossは出力側から見た時のドレインソース間の総電荷量で、RDS(ON)(オン抵抗)は、MOSFETを動作(オン)させた時のドレインソース間の抵抗値。この2つをかけ合わせた値が低いほど、スイッチング動作の効率が向上し、スイッチング損失が少なくなる。
2025年前半にサンプル出荷を開始へ
ロームは2023年にはTSMCの650V GaN HEMTプロセスを採用。650V耐圧品はTSMCで生産している。また、2024年12月にTSMCと車載GaNパワーデバイス開発と量産に関する戦略的パートナーシップ締結を発表するなど連携を強化してきた。
ロームによると、第2世代GaN HEMTのQossは従来シリコン品との比較で30%程度低減しているという。同社は高いGaNプロセス技術を持つTSMCと共同で、さらなるQoss改善に取り組んでいて、今回、第2世代から大幅にQossを削減した第3世代の650V耐圧GaN HEMTを、2025年に量産する計画だと明かした。
ロームは第3世代GaN HEMTについて、ディスクリート品やドライバー内蔵のSiP(System in Package)など複数の製品を用意し、2025年前半にサンプル出荷を開始。2025年末から2026年3月にかけ、順次量産を開始していく予定だという。
近年成長が本格化してきたGaNパワーデバイスだが、そのコストの高さなどの課題は残されている。ロームは、例えば330W AC-DC回路において、GaNデバイスを用いたトーテムポールPFC回路の導入によって、従来型PFC回路およびアクティブブリッジPFC回路と比較し部品数が削減でき、全体のシステムコスト低減(および小型化)が実現できる、と強調している。
ロームは、こうしたシステムコスト低減に加え、デバイス自体のコスト低減にも取り組む。Qossの改善はチップサイズの小型化につながることから、ウエハー1枚当たりの取れ数増加によるコストダウンが見込まれる。さらに、同社はTSMCにおいて現在6インチで製造するGaNパワーデバイスについて、2026年に8インチ化することを計画している。
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