半導体製造で10nm以下の微小欠陥を高感度で検出:機械学習を活用し過検出を大幅抑制
日立製作所は、日立ハイテクの協力を得て、半導体製造工程で発生する10nm以下の微小な欠陥を、高い感度で検出できる画像処理技術を開発した。機械学習を活用することで、「欠陥」とそうではない「製造ばらつき」の判別が可能となり、過検出を90%以上も抑えた。
「欠陥」とそうではない「製造ばらつき」を正確に判別
日立製作所は2025年2月、日立ハイテクの協力を得て、半導体製造工程で発生する10nm以下の微小な欠陥を、高い感度で検出できる画像処理技術を開発したと発表した。機械学習を活用することで、「欠陥」とそうではない「製造ばらつき」の判別が可能となり、過検出を90%以上も抑えた。
半導体デバイスは、微細加工技術の進展などにより高性能化が一段と進む。こうした中、半導体製造工程では品質管理や生産性の向上が、これまで以上に重要となってきた。このためにも、製造工程で発生する微細な欠陥を正確に検出し、早期に対策をとる必要がある。
日立は今回、画像処理や機械学習、データサイエンスなどの知識を活用し、微細な欠陥を高い認識率で検出できる技術を開発した。開発した欠陥検出技術は大きく2つの特長があるという。
1つは、機械学習を用いることで高感度な欠陥検出を可能とした。まず事前学習として、良品画像にノイズを加えた劣化画像のデータを多数生成する。そこから良品画像の再構成に有効なデータの特徴を機械学習する。そして、欠陥を含む画像から良品画像を自動で再構成し、これらを比較することで微小な欠陥を検出する。実験では、走査型電子顕微鏡(SEM)を用い、評価用サンプル上に発生した10nm以下の欠陥が検出できることを確認した。
もう1つは、回路パターンのレイアウトを機械学習によって分類する技術である。欠陥サイズが小さくなると、「欠陥」とそうではない「製造ばらつき」との判別が難しく、過検出になりやすいという。そこで今回は、レイアウトに応じた検出感度調整を行うことによって、特定の回路パターン上で生じる過検出を90%以上も抑えることに成功した。
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