熱電材料として「Mg2Sn単結晶」が実用レベルに:熱電発電デバイスへの応用に期待
東北大学と精華大学(中国)の研究グループは、マグネシウム・錫化合物(Mg2Sn)単結晶について、n型とp型の両方で熱電性能を高めることに成功した。自動車排熱や産業排熱を利用して発電する熱電発電デバイスへの応用が期待される。
無置換のMg2Sn単結晶に比べ、zTはn型が62倍、p型が32倍
東北大学と精華大学(中国)の研究グループは2025年3月、マグネシウム・錫化合物(Mg2Sn)単結晶について、n型とp型の両方で熱電性能を高めることに成功したと発表した。自動車排熱や産業排熱を利用して発電する熱電発電デバイスへの応用が期待される。
熱電発電デバイスは、n型とp型の熱電材料をπ字型に直列接続した構造となっており、デバイスの片側を排熱で加熱すれば発電する仕組みだ。共同研究グループはこれまで、Mg2Sn単結晶にMgの空孔欠陥を導入する手法を開発してきた。
そして、単結晶の電子やホールを増やすため、アンチモン(Sb)やリチウム(Li)で部分置換したところ、多結晶よりも高い無次元性能指数(zT)が得られたという。また、ホウ素(B)で部分置換して化学的圧力を加えると、多結晶よりも低い熱伝導率となった。
実験では、Mg2Sn単結晶をSbとBで共置換した「n型試料」および、LiとBで共置換した「p型試料」を作製した。いずれの単結晶にもMg空孔欠陥が存在することを確認した。B置換量が増えると、化学的圧力が加わったことでMg空孔欠陥の量が増え、転位密度も増大することが分かった。
N型試料とp型試料のいずれも、Bで共置換することによりMg空孔欠陥量と転位密度は増える。一方で空孔欠陥領は小さくなった。これを受けて、B置換量が増えることによって電気伝導率はわずかに低下するものの、熱伝導率は大きく減少することが分かった。各試料におけるzTの最大値を調べたところ、n型はSb、B共置換試料が「0.83」で最も高く、p型ではLi、B共置換試料が「0.42」となった。この値は、無置換のMg2Sn単結晶に比べ、それぞれ62倍および32倍である。
今回の研究成果は、東北大学大学院工学研究科応用物理学専攻の黄志成助教と林慶准教授、宮崎譲教授および、精華大学(中国)の李敬鋒教授らによるものである。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
東北大、太陽電池用SnS薄膜の最適組成を解明
東北大学は、太陽電池に用いられる硫化スズ(SnS)薄膜の組成を精密に制御する手法を開発するとともに、「組成のずれ」が電気的特性や膜質に与える影響を実験的に解明した。東北大学ら、テラヘルツ光で光ダイオード効果を観測
東北大学と静岡大学、大阪大学および、神戸大学の共同研究グループは、コバルトオケルマナイトにおいて、テラヘルツ光の一方向透過性(光ダイオード効果)を観測した。また、理論計算により一方向透過性と特異な吸収の起源が「自発的マグノン崩壊」であることも明らかにした。光応答性と強誘電性が共存する固体有機材料 メモリ応用に期待
東北大学は、有機分子の分子設計と固体中における分子配列を適切に制御することで、複数の機能を共存させた「固体有機材料」を信州大学と共同で開発した。この材料は、固体状態で光応答性と強誘電性が共存しており、高密度な電場−光メモリ素子への応用が期待される。リチウムイオン電池正極からの金属溶出を可視化
東北大学は、リチウムイオン電池正極から遷移金属イオンが電解液中に溶出する様子をリアルタイムで可視化する手法を開発した。この手法を用いて、電池を充放電する時にマンガン(Mn)が溶出する電圧や場所などを定量的に測定した。記憶と演算の機能を併せ持つスピン素子を開発
東北大学らの研究グループは、記憶と演算の機能を併せ持つ「スピントロニクス素子」を開発したと発表した。省エネAIチップなどへの応用が期待される。光と磁石が強く結合 量子コンピュータを室温で操作できる可能性も
東北大学や京都工芸繊維大学らの研究グループは、磁性メタ原子をカイラルメタ原子に挿入して作成した人工構造物質(メタマテリアル)「磁気カイラルメタ分子」が、室温で極めて強く結合したマグノンポラリトンになることを確認した。