「メモリ密度は倍」独自PCM搭載の車載MCUを25年末に量産へ、ST:28nmノードで製造(2/2 ページ)
STMicroelectronicsが、独自の相変化メモリ(PCM)技術に基づく最新メモリ技術「xMemory」搭載した、新しい車載マイコン「Stellar」シリーズを発表した。今後発売する全てのStellar PおよびGシリーズ製品にxMemoryを採用する予定で、まず「Stellar P6」を2025年末ごろに量産開始する。
「自動車メーカーの開発期間を大幅に短縮」
自動車メーカーは、車両の長寿命化およびデジタル能力向上に向け、ソフトウェアとハードウェアをプラットフォーム間で最大限に再利用するために、シームレスな統合を必要としている。またソフトウェアの複雑に伴い、メモリがボトルネックになっているという。これは新しい機能や規制、大量のメモリを必要とするAI/機械学習機能、さらにOver-The-Air(OTA)による更新などへの対応が求められるためだ。
ソフトウェア定義車両(SDV)では、将来的なソフトウェア開発にも対応できる十分な内蔵メモリが確保可能な適切なマイコンを、ライフサイクルのスタート時に選ぶことが理想だ。過剰な性能を持つ各種メモリを採用した場合コストが増加する一方、性能が不十分なメモリでは、メモリ容量の大きなマイコンを別に見つけて再び認定取得が必要になる場合があり、複雑さもコストも、遅延も増大してしまうといった課題がある。
STは今回「xMemoryは、開発段階または納車後でも使用可能なメモリ容量を拡張することでその課題に対処し、アプリケーションの無制限なアップグレードを可能する」と説明。この点に関し、アナリスト会社Moor Insights & Strategyは、同社が発行するリサーチペーパーにおいて「車載マイコンにおけるSTの革新的なアプローチの1つは、同じダイ上に拡張可能なNVMを提供するxMemory搭載Stellarだ。これは実質的に、例えば10Mバイト(MB)の構成から始めても、ソフトウェアのフットプリント拡大に応じて、そのメモリを13MB、15MB、さらには19MBに拡張できる柔軟性を備えていることを意味する。この機能は、開発サイクルを短縮し、将来のメモリ要件が容量を上回ることに対する戦略的予防策となる」と説明している。
STのグループバイスプレジデント兼汎用・車載用マイクロコントローラー事業部ジェネラルマネジャーであるLuca Rodeschini氏は「STは、自動車市場におけるより容量の大きいメモリに対するニーズに対応するため、最小のビットセルで最高のメモリ技術を開発した。xMemoryを搭載したStellarマイコンは、未来の自動車アーキテクチャを効率化することで、コストパフォーマンスをさらに高め、自動車メーカーの開発期間を大幅に短縮させるだろう。この革新的ソリューションによって、自動車メーカーは同じハードウェアを使用しながら、長期にわたって継続的に製品を刷新する余地のあるインフラストラクチャ/機能を確保できる。そのため、デジタル化と電動化の新たなイノベーションを安心して導入し、市場をリードしながら自動車のライフタイムを延ばせるようになる」と述べている。
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