生産能力5年で2倍へ、キオクシアの生産/投資戦略計画:中長期見通しも語る(3/3 ページ)
キオクシアホールディングスの副社長執行役員である渡辺友治氏が、今後5年で記憶容量ベースで前工程の生産能力を2024年度の2倍に高める方針など、同社の生産/投資戦略を語った。
AI市場にとって、NANDも「GPUやHBM同様に重要」
キオクシアHDは、今回の経営方針説明会で中長期の市場見通しや経営指針についても説明した。
NANDフラッシュメモリの主要な市場はスマートフォンとPC、データセンターの3つだ。キオクシアHDの常務執行役員戦略統括責任者である矢口潤一郎氏は「いずれにおいてもAIによりデータ生成が加速し、NANDの需要が拡大していく」と説明。スマホやPCの1台当たりのフラッシュメモリ搭載容量は、AI搭載技術の増加に伴い増加し、それぞれ2029年まで年平均成長率(CAGR)16%、13%で成長。データセンター市場でのフラッシュメモリ総需要もCAGR27%で成長するという予想を示した。
特にデータセンター向けではAIサーバの推論向けが伸長をけん引する見込みで、2029年にはデータセンター向け需要のうち41%がAI推論向けとなると予想されているといい矢口氏は「GPUや広帯域幅メモリ(HBM)と同様に、AI市場にとってNANDフラッシュメモリがストレージとしてますます重要なソリューションになっていく」と強調した。
フラッシュメモリ市場全体でみても2025〜2029年のビット需要はCAGR20%で成長する中で、2029年には約5割がAI関連となるとも予測されている。その中でもAI推論は、データセンターの他、PCやスマホなども含めるとCAGR69%という高い成長が見込まれているという。
「過去最悪級のダウンターン」の後に最高益達成、今後は?
矢口氏はまた、同社の近年の業績について触れ「過去5年間の中で2022年後半から2023年にかけて、メモリ業界、そして会社としても過去最悪級の大きなダウンターンを経験した」と言及。そのうえで「この間、当社は生産調整や構造改革を実施し、リーンな事業体質に改善したこともあり、市場回復に伴って2024年度は過去最高売り上げ、最高益を達成した」と強調。さらに「売り上げ収益は依然シクリカルであるものの、『high is higher,low is higher』となり、また売り上げ構成としてはSSD&ストレージのセグメントが着実に伸長してきている」とした。
成長に向けた資源投入として、設備投資は売り上げ収益比20%以下を保つほか、研究開発費は同8〜9%を目安にSSD事業や次世代デバイス開発などに注力していく方針。人材については開発/生産を中心に年間約700人程度を採用していくという。
成長性では、前述のフラッシュメモリ市場と同等のビット伸長をキープする計画。一方、収益性については、ギガバイト当たりのコスト削減率10%台半ばを維持するとともにデータセンター/エンタープライズ向けSSDの販売率を上げていくことで営業利益率20%台半ばを目指すとしている。
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