フォトダイオードをSiC上に接合、高出力テラヘルツデバイスを実現:6Gなどに向け2026年の量産目指す
OKIとNTTイノベーティブデバイスは共同で、異種材料接合によって高出力テラヘルツデバイスを高い歩留まりで量産できる技術を確立した。この技術を用い、6Gや非破壊センシングに用いられるテラヘルツデバイスの量産を2026年より始める。
CFB技術を用いInP系UTC-PDをSiCウエハーへ異種材料接合
OKIは2025年6月、NTTイノベーティブデバイスと共同で、異種材料接合によって高出力テラヘルツデバイスを高い歩留まりで量産できる技術を確立したと発表した。この技術を用い、6Gや非破壊センシングに用いられるテラヘルツデバイスの量産を2026年より始める予定。
テラヘルツデバイスは、大容量で低遅延通信などを可能にする6G装置や、高精度な非破壊検査装置などの基盤技術として期待されている。こうした中、実用化に向けては高出力テラヘルツデバイスの開発や量産技術の確立が急務となっていた。
NTTイノベーティブデバイスはこれまで、超高速で高出力動作が可能なInP系UTC-PD(Uni-Traveling Carrier Photodiode)に二波長の光を入射することで、テラヘルツ波を発生させるフォトミキシング素子を開発し、改良を行ってきた。ただ、ワイヤレス通信へ応用するには、多値変調光通信信号をテラヘルツ信号に変換する際、リニアリティを維持しながら高出力化に対応する必要があり、フォトミキシング動作において、1dB飽和出力を高くしなければならないという。
そこでNTTイノベーティブデバイスは、1dB飽和出力値を実現するため、素子の放熱特性に着目。InP系UTC-PDを放熱性に優れたSiCに直接接合する技術を用いれば、従来に比べ性能が約10倍となるフォトミキシング素子を実現できるという見通しを得た。
ただ、従来の接合プロセスは、InP系UTC-PDとSiCを接合するのに、InP系エピタキシャルウエハーとSiCウエハーをウエハーボンディングによって全面接合していた。この方法だと歩留まりが低いという課題があった。また、InP系結晶薄膜の約90%は不要であり、後工程でこれを除去しなければならず無駄も生じていた。
こうした中、OKIは長年蓄積してきたCFB(Crystal Film Bonding)技術を用いて、InP系エピタキシャルウエハー上のInP系結晶薄膜を素子レベルで分割し、デバイスの動作に必要な部分のみを選択し、SiCウエハーへ異種材料接合することに成功した。CFB技術で接合した素子の歩留まりはほぼ100%となった。従来プロセスを用いた接合歩留まりは約50%であり、飛躍的に向上することを実証した。従来プロセスで除去していた結晶薄膜も有効活用できるという。
NTTイノベーティブデバイスは、CFB技術で結晶薄膜を接合させたSiCウエハーにUTC-PDを形成しチップ化した。試作したデバイスを評価したところ、単素子で1dB飽和出力値が1mW以上となり、高出力かつ優れたリニアリティが得られた。しかも、従来の接合プロセスで作製したデバイスに比べ、暗電流は約3分の1に低減することを確認した。
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