「Switch 2」を分解 NVIDIAのプロセッサは温存されていた?:この10年で起こったこと、次の10年で起こること(93)(4/4 ページ)
今回は、任天堂が2025年6月に発売した「Nintendo Switch 2(ニンテンドースイッチ 2)」を分解した。Switchには初代からNVIDIA製プロセッサが搭載されている。Switch 2では、このプロセッサはどう変わったのだろうか。
Orin Nanoには活用されなかったプロセッサ
図6はNVIDIAのアーキテクチャ「Ampere」世代のGPU、Orin、Switch 2プロセッサの関係である。NVIDIA Ampere世代のRTX 3000シリーズは、いずれもSamsung Electronicsの8nmで製造されている。RTX 3000はCPUのないRTコア内蔵GPUチップだ。シリコン上の年号は2020年。Orinは、RTX 3000のGPUコア数をカットダウンし(RTX3060の約40%減)、Arm「Cortex-A78」CPUを12コアと、カメラISP(Image Signal Processor)やMIPIインタフェースなどを付加して、2021年にデザインされ、2022年に販売された(翌2023年には機能を半分に落としたOrin Nanoを販売。ただしOrinと同じシリコンを活用)。
Switch 2のGMLX30-A1は、OrinのCPU12コアを8コア、GPUコアを25%削減、DRAMインタフェースを半分にしたものになっている。Switch 2のシリコンには「T239-A01」のシリコンネームと、2021年のシリコン年号が搭載されている。AGX Orinと同時期に開発されたものであることが明らかになっている。「T234」がOrin、「T239」がOrin Nanoとして発売されるのが順当であるものの、Orin Nanoは、Orinと同じ、T234が活用されている。Switch 2で使われるT239は、Orin Nanoに活用されず、ある意味温存され、Switch 2に採用された可能性が高い。最先端よりも性能面ではやや劣る部分はあるものの、先端に比べ安価な8nmプロセスで製造できる意義は大きいからだ。
表3は、NVIDIA Orin、Orin Nano、Switch 2プロセッサと基板の様子である。シリコン上に搭載される機能の半分をOFFして販売したOrin NanoとSwitch 2のプロセッサの関係には、いろいろな物語が背後にありそうで、想像すると面白い(あえて書かないけど)。
次回はNVIDIA、AMD、インテルの新GPUを取り上げたい。
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