映像から未来の状態を予測、Metaが「V-JEPA」で目指す世界:いずれは「超人工知能」の世界へ(2/2 ページ)
Metaは、2025年6月に開催された欧州のイベントで、予測ビデオモデル「V-JEPA」を核とするロードマップを発表した。Metaは併せて、V-JEPAで目指す世界を語った。
人間と同等以上の「超人工知能」
Le Cun氏は、Metaの内部用語である「超人工知能(ASI)」とAMIを紹介した。
同氏は、「超知能は汎用性を意味するわけではない。特定の領域で人間よりわずかに優れているだけだ」と述べる。Metaの長期計画は、日常生活において「人間と同等、もしくはそれ以上に優れたAIアシスタントを開発すること」だという。AMIの青写真は、物理的な世界を理解し、常識を持ち、持続的な記憶があり、推論と計画が可能で、制御可能で安全なシステムに焦点を当てている。
超知能の特性について、Le Cun氏は、チェスやポーカー、ルートプランニングなどの特定の領域で人間より優れた能力を発揮する、既存のAIシステムを例に挙げた。同氏は、AIの未来を「拡張知能」と表現し、「人間が特定のタスクでより賢いAIアシスタントによって力を得ること、つまり仮想の専門スタッフを擁するようなものだ」と説明した。「自分より優秀な人や機械と協力することで能力を拡張することができる」とLe Cun氏は述べている。
Le Cun氏は「ユーザーの知識と好みのメンタルモデルを備えたエージェントシステムを構想している」と述べている。同氏は「これらのシステムは、私たちが何を知っていて、何を知らないのか、何を習得できるのか、どのような情報に興味を持つのかといったメンタルモデルを備える。エージェントシステムは、旅行の予約や家庭用デバイスの管理など、複雑な行動を計画できるようになる」と説明した。
トレーニング手法も改善へ
Metaは今後数カ月かけて、トレーニングを拡大し、V-JEPAをより幅広いシナリオに適用し、トレーニング手法を改良していく計画だという。Le Cun氏は「当社のモデルを使って、ロボットの簡単な動作をプランニングすることも可能だ」と述べている。また、Metaのチームは、V-JEPAアーキテクチャのトレーニングや階層型プランニングの改善に向けて、より効果的な方法を模索しているという。
Le Cun氏は、ニューヨークからパリへの旅行を例に挙げて、課題を説明した。フライトの予約から、ドアを開けてエレベーターまで歩くことまで、さまざまな抽象化レベルで計画を立てる必要がある。「非常に長い一連の行動を計画することはできない。多くの行動を伴う複雑なタスクの場合、階層的に計画する必要があるが、この課題は完全に未解決だ。AIシステムでこれを行う方法はまだ分かっていない。アイデアはいくつかあるが、まだ研究段階だ」(Le Cun氏)
こうした問題をどう解決するのかという問いに対して、Le Cun氏は「優秀な人材を雇用し、これは取り組む価値のある興味深い問題だと説得しようと考えている」と答えた。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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