「AI時代」反映したPCIe 7.0、光接続も視野に:データレートは128GT/s
PCI Express 7.0が正式リリースされた。AIの普及に伴う高速データ通信への要求を反映した仕様となった。
AIの成長に伴うデータ伝送の高速化への圧力が、PCI Express(PCIe)の最新版に反映されている。2025年6月11日に正式リリースされ、利用可能になったPCIe 7.0は、AI/機械学習や、800Gイーサネット、クラウド、量子コンピューティングのようなデータ駆動型のアプリケーションをターゲットとしてアップデートされている。
この仕様の重要な特徴としては、128.0Gトランスファー/秒(GT/s)のデータレート(ビットレート)と、16レーン構成による双方向最大512GB/s、PAM4(Pulse Amplitude Modulation with 4 levels、4値パルス振幅変調)とフロー制御ユニット(Flit)ベースのエンコーディングを使用するシグナリング、電力効率の向上などが挙げられる。
PCI-SIGのプレジデントであるAl Yanes氏はブリーフィングの中で「PCIe 6.0で既にPAM4を採用していることから、これは進化的アプローチだといえる。Flitベースのエンコーディングも前回のアップデートで導入されている」と述べた。
Yanes氏によると、PCIe 7.0はPCIe仕様の全てのアップデートと同様に、旧世代のPCIe技術との後方互換性だけでなく、I/O帯域幅を3年ごとに倍増させるという長年の伝統も維持しているという。
Yanes氏は「仕様の開発には3年かかる。イノベーションの実現には3年かかる。そして旧世代技術へのフィードバックにも3年かかる。これがわれわれのスイートスポットだ」と述べている。また、「クロックレートを倍増させることは容易ではないため、テープアウトと検証に3年間を要するのだ」と付け加えた。
「PCIe 7.0を改善する上で主な推進力となったのは、ハイパースケールデータセンターや高性能コンピューティング(HPC)をはじめ、AIを導入しているデータ集約型市場の帯域幅需要を満たせるようにすることだった。さらに最新版は、軍事/航空宇宙や自動車などの分野のユースケースのニーズもサポートしている」(Yanes氏)
またYanes氏は「PCI-SIGは、2022年に6.0をリリースして以来、自動車分野に注目し、幅広い導入を実現しようとしてきた。自動車分野が、性能に対するニーズからPCIeに接近していくことを期待している」と述べる。
PCI-SIGは今回、PCIe 7.0のアップデートに加え、業界初となる標準ベースの「Optical Aware Retimer」ソリューションの導入も発表した。Yanes氏は「PCI-SIGの光ワーキンググループは、既存のPCIe 6.0設計/デバイスに簡単に移行可能な方法で光PCIeアーキテクチャの標準化を実現しており、それは新しいPCIe 7.0仕様にも組み込まれている。ワーキンググループのメンバーには、ロジックやプロトコル、光学、電気などの各分野の専門家たちが参加している」と述べる。
光接続も視野に
「Optical Aware Retimer Engineering Change Notice」は、AIやクラウド、データセンター環境などを対象として、PCIe 6.4仕様と新しいPCIe 7.0仕様を修正し、PCIeリタイマーをベースとするソリューションを追加することで、光ファイバーにPCIe技術を実装するための業界初となる標準化された方法を提供している。
PCIe 7.0は既に少数の企業によるデモ製品で利用可能となっているものの、メンバーが自社製品をテストできるよう、PCIe 6.0のコンプライアンステストはまだ進行中だという。2025年末までにインテグレーターリストを作成することを目指している。「広く普及させたいのであれば、じっくりと時間をかけて進めていく必要がある」(Yanes氏)。なお、PCIe 8.0仕様の策定も進行中だ。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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