この記事は、2025年8月4日発行の「電子機器設計/組み込み開発 メールマガジン」に掲載されたEE Times Japan/EDN Japanの編集担当者による編集後記の転載です。
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先日、テクセンドフォトマスクが開催するプレスセミナーに参加し、フォトマスクの技術開発について聞いてきました。
同社はTOPPANホールディングスのグループ会社であるトッパンフォトマスクとしてフォトマスクの製造を手掛けてきて、2024年11月に社名を変更し現在のテクセンドフォトマスクとなりました。
フォトマスク市場は、半導体メーカーやファウンドリーが社内で内製する「内作」と、テクセンドフォトマスクのような専業メーカーが手掛ける「外販」に分かれています。2023年は内作が市場の6割以上を占めましたが、外販の中ではテクセンドフォトマスク(当時はトッパンフォトマスク)が37.8%のシェアを誇り、世界1位となったそうです。
フォトリソグラフィ技術においては、波長を短くするほど細かいパターンを形成できます。セミナーに登壇したテクセンドフォトマスク Global R&D 統括部長の小嶋洋介氏は「半導体の歴史は、露光装置の短波長化の歴史ともいえる」と語りました。
EUV露光装置登場前、ArF液浸露光装置を「延命」したフォトマスク
1980年代の露光装置の波長は435nm、ロジック半導体の回路線幅は250nmほどでした。その後短波長化と微細化が進みますが、2006年にArF液浸露光装置(波長193nm)が実用化されてから、2018年にEUV露光装置(波長13.5nm)が実用化されるまでは、実に12年がかかりました。
「EUV露光装置の登場は、波長を一気に10分の1以下にする大きな技術革新だった。その分ハードルは高く、実現するまで時間がかかった。その間も微細化を止めることはできないので、ArF液浸露光装置のままで微細化を実現する技術が求められた」(小嶋氏)
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