「GaNのコストは5年以内にSi並みに」 ロームの勝ち筋は:GaN搭載6.6kW OBC試作品を公開(3/3 ページ)
「窒化ガリウム(GaN)は、遅くとも5年以内にシリコン(Si)のコストに追い付くだろう」――。ロームは、GaNパワー半導体の大きな課題の1つとされるコスト面について、こうした見解を示す。民生向け中心からAIサーバや車載などへの展開が加速し、本格化してきたGaNパワー半導体市場。ロームは、GaNのさらなる普及に注力しながら、独自の強みを生かし市場での存在感を高めていく方針だ。
SiCの独自車載モジュールを改良、既に採用決定
PCIMの会場では、同社の第4世代SiC(炭化ケイ素) MOSFETを採用したSchaefflerのトラクションインバーターなど、SiC製品も数多く展示していた。
ロームは2024年6月に、xEV(電動車)用のトラクションインバーター向けで、2in1仕様のモールドタイプSiCパワーモジュール「TRCDRIVE pack」を発表。トラクションインバーターは、xEVにおける各アプリケーションの市場の大半を占める「車載SiCの主戦場」であり、同製品によって市場でのシェア拡大に向けた取り組みを本格化した。
2024年11月に開催された欧州最大規模のエレクトロニクス展示会「electronica 2024」では、同製品を初採用したフランスの自動車部品大手Valeoのインバーターを初公開していた。
SiCパワーデバイス事業本部 SiCパワーモジュール事業部 統括課長である林健二氏は「TRCDRIVE packの反響は良く、これまで話ができていなかったような顧客も増えてきて、手応えを感じている。モジュールは競合もイミテーションしてきていて、その価値も間違いないことが分かっている」と強調。そのうえで、同モジュールを拡販する中で出てきた顧客の声を反映し、電極の空間距離を長くしたり、センシングの端子を増やしたり、ピンの精度を向上させたりといった改善も実施。この新モデルについても、既に採用が決定していて2027年にも量産開始予定といい、シェア拡大に向けた着実な取り組みを進めているという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
TSMCがGaN事業撤退へ、ロームは「さまざまな可能性を協議」
TSMCが2027年7月までにGaNファウンドリー事業から撤退すると決定した。同社と協業するロームは「協業体制の維持、深化に向けて、引き続き互いの強みを融合させることで市場/顧客ニーズに適切に対応していく」と述べている。ロームとNVIDIA、AIファクトリー実現に向け協業
ロームは、次世代AIデータセンターに向けた「800V電力供給アーキテクチャ」の開発で、NVIDIAと協業する。新たなデータセンターの設計に対しロームは、Si(シリコン)に加え、ワイドバンドギャップ半導体のSiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)など、最先端のパワー半導体デバイスを提供していく。ローム初の高耐圧GaNデバイス向け絶縁ゲートドライバーIC
ロームは、同社初となる高耐圧GaN HEMT向け絶縁ゲートドライバーIC「BM6GD11BFJ-LB」を開発した。GaNデバイス製品と組み合わせることで、高周波・高速スイッチング駆動を実現し、モーターやサーバ電源などを小型化・高効率化できる。ロームが25年に第3世代GaN HEMT量産へ TSMCとQoss改善
ロームは、650V耐圧GaN HEMTの第3世代を2025年に量産開始する。高いGaNプロセス技術を有するTSMCと共同で、スイッチング損失低減に関わる出力電荷量(Qoss)の改善に取り組んでいて、第3世代品では現行品からQossを大幅に削減する。また、2026年には、GaNパワー半導体製造の8インチ化も計画する。トヨタの中国向け新型BEV、ローム製SiC MOSFETを搭載
ロームは、トヨタ自動車などが開発した中国市場向け新型クロスオーバーBEV「bZ5」に、第4世代SiC MOSFETを搭載したパワーモジュールが採用されたと発表した。ローム、SiC MOSFET用の新SPICEモデルを公開
ロームは、パワー半導体のシミュレーション時間を従来に比べ半減できる新SPICEモデル「ROHMレベル3(L3)」を開発した。L3の第4世代SiC MOSFETモデル(37機種)は既にウェブサイト上で公開しており、製品ページ画面などからダウンロードできる。