「世界初」FZ法でルチル型二酸化ゲルマニウムバルク結晶を育成、Patentix:約5mmの大きさを実現
Patentixは、FZ法(浮遊帯域溶解法)を用いて、ルチル型二酸化ゲルマニウム(r-GeO2)バルク結晶を育成することに成功した。引き続き、結晶のさらなる大型化と高品質化に取り組み、ハーフインチサイズのr-GeO2バルク基板について早期実現を目指す。
Flux法で合成したr-GeO2バルク結晶を種結晶にして育成
Patentixは2025年10月、FZ法(浮遊帯域溶解法)を用いて、ルチル型二酸化ゲルマニウム(r-GeO2)バルク結晶を育成することに成功したと発表した。引き続き、結晶のさらなる大型化と高品質化に取り組み、ハーフインチサイズのr-GeO2バルク基板について早期実現を目指す。
r-GeO2は、バンドギャップが4.68eVと大きく、炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)を上回る。p型とn型の両導電性の制御が可能という予測もある。このため、より高耐圧で高出力、高効率のパワー半導体デバイスを実現するための次世代材料として注目されている。
Patentixはこれまで、Flux法を用いてバルク結晶を合成することに成功してきた。ただ、そのサイズは最大でも約15×2.5×2.5mmであった。r-GeO2を用いたパワー半導体デバイスの実用化に向けては、より高品質かつより大きなバルクが必要になる。
そこで今回は、Flux法で合成したr-GeO2バルク結晶を種結晶にして、FZ法によってr-GeO2結晶を育成した。その大きさは約5mmだ。育成した結晶部分の側面は、ファセット面(結晶面)であることを確認。しかもr-GeO2の(110)面であることが分かった。
さらに、育成した結晶部を粉末にしてX線回析測定を行い、r-GeO2の結晶ピークを確認した。ただ、trigonal型r-GeO2結晶ピークも観測され、ルチル型とは異なる結晶相が一部含まれていることが分かった。このため今後は、ルチル型r-GeO2のみからなるバルク単結晶を実現するなどして、結晶の高品質化と大型化を目指す。
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