独自技術で攻めるサンケン電気のGaN戦略 30年には縦型量産も:サファイア基板&PSJ技術(3/3 ページ)
サンケン電気がGaNパワーデバイス市場への本格参入を狙っている。競争も激化しているが、高耐圧かつ低コストを実現する独自技術の横型GaNで差別化を図る他、2030年度には縦型GaNの量産も計画しているという。今回、同社幹部に詳細を聞いた。
サファイア基板のメリットとは
GaNデバイスのコストの大きな要因の1つとして挙げられるのがウエハー価格だが、サンケン電気は今回、市場で主流のSiと比べると高価とされるサファイア基板を採用している。この理由は絶縁材料であることからPSJ構造を生かし高耐圧化が実現できることの他、GaN on Siの場合にはSi基板自体は安くとも、SiとGaNの物性の異なりから生じる応力を緩和するためのバッファー層のコストが高くなるためだという。
半貫氏は「一般的なGaN onSiのGaN HEMTではSi基板を用いた場合、同じ耐圧のものを作ろうとすると、バッファー層をかなり厚く作る必要がある。われわれは2度目の挑戦であり、Siについてはそうした点も把握している。サファイアはGaNとの物性が非常に近く、バッファー層がほぼ不要になる」と説明。例えば650Vであれば、Siの場合は7μm程度エピを積む必要があるが、サファイアは1μm程度で済むという。
半貫氏は「これは耐圧が高くなっても変わらない。サファイア基板は絶縁材料であり、どんな耐圧でもほぼ1μmで済むという特長がある」と説明。こうしてサファイアで薄いバッファー層を実現することでコストパフォーマンスを追求。競合とも「価格でも戦えるだろうと判断している」とした。
またサファイア基板自体の価格についても「サファイアの生成方法自体はそれほど難しくなく、ボリューム次第で価格も下げられるという話も聞いている。それらを踏まえると、われわれが売れるようになれば、ボリュームゾーンとしては基板価格も下がってくると見ている」とした。
独自開発のドライバーICと統合して展開
小池氏は「GaNデバイスだけではうまく駆動ができず、駆動するICの技術はパワーデバイスと同じかそれ以上に重要だ」と強調。同社は、横型PSJ-GaNと同時にその特性を引き出すドライバーICなどを開発し、それらを組み合わせた電源ICやIPMなど顧客が使いやすいソリューションとして展開していく計画だという。
下図は実際のPSJ-GaN内蔵電源ICの開発品だ。PSJ-GaNはノーマリーオンのため、ノーマリーオフ動作の低耐圧のMOSFETと組み合わせるとともに、専用に開発したドライバーなどと1パッケージ化。「複雑な調整が不要で、従来ICと同様にスイッチング電源を構成し、最高効率を実現する」としている。
開発中のPSJ-GaN搭載非絶縁ダウンコンバーターICと既存のSi MOSFET版の製品を比較すると、耐圧は750Vから1400Vとなった上、オン抵抗は4分の1の0.45Ω、電力効率は1.5ポイント増の84.4%に向上させつつ、サイズは8分の1(DIP8に対してSOIC8)の小型化を実現している。同社はさらにPSJ-GaN搭載フライバック電源ICも900V、1200V、1700Vで50Wクラス品を開発中だという。
なおPSJ-GaNのノーマリーオフ化についても「まだ技術的なハードルがある」ものの開発を進めているという。
縦型GaNで自動車/産機の大電流領域を狙う
サンケン電気は、小電流から中電流領域で横型PSJ-GaNの展開を進めつつ、大電流領域の自動車/産機向けモジュールなどに搭載する縦型GaNも開発し、2030年に量産開始する計画だ。現在の開発ステージとしては「基本構造確立」で、TCADシミュレーションを行っている段階だという。
半貫氏は「挑戦的な目標ではあるが、GaNを手掛ける以上、最終的には縦型を目指すべきと考えている。GaN基板研究では日本が最も進んでいて、われわれもコンソーシアムなどで縦型GaNの結晶の在り方や、大口径化の時期、コストなどはさまざまな議論をしている。そうした中で、大口径化やコストは未定だが、構造はだいたい決まっている。後はでき上がるか、歩留まりがどうか、特性がどうかというところで、当社だけではなく産官学の連携が必要だが、計画実現に向け取り組んでいく」とした。
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