NVIDIAによるAIデータセンターはGaNに「SiC×Tesla」級の波をもたらすか:電子機器設計/組み込み開発メルマガ 編集後記
窒化ガリウム(GaN)パワーデバイス市場の成長が一気に加速する可能性があります。
この記事は、2025年12月8日発行の「電子機器設計/組み込み開発 メールマガジン」に掲載されたEE Times Japan/EDN Japanの編集担当者による編集後記の転載です。
※この記事は、「電子機器設計/組み込み開発 メールマガジン」をお申し込みになると無料で閲覧できます。
NVIDIAによるAIデータセンターはGaNに「SiC×Tesla」級の波もたらすか
NVIDIAが発表した次世代AIデータセンター向けの800V直流電源アーキテクチャは、パワー半導体市場成長のけん引役となることが期待されています。特に注目されるのが窒化ガリウム(GaN)パワー半導体の発展で、業界アナリストには「NVIDIAのAIデータセンターへの取り組みが、GaNに『炭化ケイ素(SiC)におけるTeslaの契機』のような勢いをもたらしている」と評価されています。
フランスの市場調査会社Yole Group(以下、Yole)によれば、GaNパワーデバイス市場は2024年から2030年まで年平均成長率(CAGR)42%で推移し、約30億米ドルの市場に成長。なかでも通信/インフラ分野は同期間CAGR53%と急成長し、2024年の2900万米ドルから3億8000万米ドル以上にまで拡大する見込みとなっています。この成長を支える要素としてYoleが挙げるのが、NVIDIAの800V直流電源アーキテクチャにおけるGaNデバイス採用です。
NVIDIAの800V直流電源アーキテクチャ構想は同社が2025年5月に発表したもの。AIの急速な普及によってデータセンターの電力需要が急増する中で、従来の電力供給システムは物理的にも経済的にも限界に達しつつあるといい、こうした課題を克服するための新たなソリューションとして提唱されています。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
ロームとNVIDIA、AIファクトリー実現に向け協業
ロームは、次世代AIデータセンターに向けた「800V電力供給アーキテクチャ」の開発で、NVIDIAと協業する。新たなデータセンターの設計に対しロームは、Si(シリコン)に加え、ワイドバンドギャップ半導体のSiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)など、最先端のパワー半導体デバイスを提供していく。
「スマホ大の12kW電力供給ボード」を目指す STの次世代AI DC向け技術
STMicroelectronicsは、次世代AIデータセンター向け電源供給システムの試作品を発表した。NVIDIAが開発する800V直流電源アーキテクチャをサポートする新しい設計だ。
onsemiがGaN市場トップの中国Innoscienceと協業 26年にサンプル出荷
onsemiが中国InnoscienceとGaNパワーデバイスでの協業に関する覚書(MOU)を締結した。InnoscienceのGaNウエハーおよび製造能力とonsemiのシステム統合、ドライバーおよびパッケージ技術を組み合わせ、40〜200VのGaNパワーデバイスの市場展開加速を狙う。onsemiは2026年上期に、協業による製品のサンプル出荷開始を予定している。
米国はGaNパワー半導体製造の中核になるか、NavitasがGFと提携
TSMCが2年以内に窒化ガリウム(GaN)ファウンドリー事業を段階的に終了すると表明して以来、業界にその波紋は広がり続けている。最近、この技術に関する新たな展開があった。GlobalFoundries(GF)がTSMCの650Vおよび80V向けGaNパワー半導体製造技術のライセンスを取得したことに加え、NavitasがGFとの提携を発表したのだ。
独自技術で攻めるサンケン電気のGaN戦略 30年には縦型量産も
サンケン電気がGaNパワーデバイス市場への本格参入を狙っている。競争も激化しているが、高耐圧かつ低コストを実現する独自技術の横型GaNで差別化を図る他、2030年度には縦型GaNの量産も計画しているという。今回、同社幹部に詳細を聞いた。