カラーフィルター微細化に貢献 富士フイルムのKrF露光対応材料:銀塩技術を応用
富士フイルムは2025年12月9日、イメージセンサー用カラーフィルター材料の新製品を発売した。「世界初」(同社)のKrF露光対応品で、銀塩写真の技術を応用して微細化、高感度化を実現したという。
富士フイルムは2025年12月9日、半導体材料事業の記者説明会を開催した。その中で、イメージセンサー用カラーフィルター材料「Wave Cntrol Mosaic」から、フッ化クリプトン(KrF)露光に対応した新製品の発売を発表した。
従来のカラーフィルターは波長365nmのi線露光で製造されていたが、新製品は、より微細な画素を形成できるKrF露光(波長248nm)に「イメージセンサー用カラーフィルター材料として世界で初めて対応した」(同社)という。
カラーフィルター材料の売上高2倍以上を目指す
富士フイルムの取締役・常務執行役員でエレクトロニクスマテリアル事業部長を務める岩﨑哲也氏は「スマートフォンで動画の撮影や編集する機会が増えたことで、カメラに対してより画質や色味の要求が高くなっている。それに伴い、イメージセンサーにもさらなる高性能化が求められることから、今回の新製品を開発した」とする。
「今後、イメージセンサーは生成AIと融合して、高精度な画像情報入力ツールに進化していくと考えられる。より高い精度や画質を実現するため、カラーフィルター材料がますます重要になる。スマートフォン用イメージセンサーに加え、AR/VRやロボティクスといった新規領域を開拓していくことで、2030年度までに、2024年度比で売上高を2倍以上に成長させたい」(岩﨑氏)
銀塩写真の技術を応用し高解像、高感度を実現
富士フイルムのシニアフェローを務める野口仁氏によると「超微細化が進むイメージセンサーに対して、従来のi線露光で作ったカラーフィルターでは、対応できるだけの解像性を実現できなくなっている」という。
そこで富士フイルムは、超微細対応型のKrF RBGカラーレジストを開発。銀塩写真の研究開発で培った技術を活用して開発した、超微細光源に適した添加剤とあわせて、カラーフィルターの超微細化に貢献する新材料を実現した。
高感度の実現のため、銀塩写真の技術を活用して独自の染料を開発した。染料は1分子だと高感度な代わりに耐熱、耐光性が低く、分子を集めて顔料にすると、耐熱、耐光性が上がる代わりに感度が落ちる。富士フイルムは、独自の分光設計技術によって、染料間の相互作用を高める接合方法を開発し、高感度と耐熱、耐光性の両立を実現した。この分光設計技術にも、銀塩写真の色彩コントロール技術が応用されているという。
原材料サプライヤーと協力し、有機フッ素化合物(PFAS)フリーで開発していることも大きなポイントだとする。野口氏は「この新しいカラーフィルターによって、将来のイメージセンサーの高性能化に貢献できる」と述べた。
富士フイルムは2025年12月17〜19日に開催される「SEMICON Japan 2025」(東京ビッグサイト)に出展し、Wave Cntrol Mosaicを含む同社の半導体材料ラインアップを展示する予定だ。
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