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中国がEUV試作機 世界の半導体市場は完全に分断されるのかレガシーチップの価格下落の可能性も(2/2 ページ)

中国で極端紫外線(EUV)露光装置の試作機が動作したと、ロイターが報じた。市場投入できるチップを量産できる装置ではないものの、中国は、最先端チップ製造における障壁をまた一つ崩したのかもしれない。さらに専門家は、これによりレガシープロセスで製造したチップの価格の下落が始まる可能性があると指摘している。

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二分される世界の半導体経済

 深センで作られたプロトタイプは、世界の半導体市場が、2つの独立した、ますます互換性のないシステムに分割されることを明確に示したのではないだろうか。この開発によりチップ産業のグローバル化時代は終わりを告げ、代わりに、個別の経済的および地政学的ルールに支配された2つの並行するサプライチェーンが存在するようになる。

 米国、欧州、台湾、韓国が主導する西側システムは、最先端の技術をけん引し続けるだろう。TSMCとIntelは既に、ASMLの高NA(開口数)EUV露光装置を2nm世代以降の適用に向けてテストしており、AIとデータセンター向けに高性能チップの製造を優先している。西側諸国の主な目標は、中国に対する技術的優位性を確保するための「コンピューティングギャップ」を維持することだ。


ASMLのEUV露光装置「EXE:5000」 出所:ASML

 TSMCは既に、裏面電源供給技術を採用した1.6nm世代のプロセス「A16」により、オングストローム時代も見据えている。TSMCの目標は、台湾の技術が常に中国をリードすることだ。中国は5nm〜3nmのプロセスに焦点を当て、技術的には欧米の後塵を拝しているが、従来の商業的な実現可能性に縛られていないという利点もある。

 中国では、SMIC(Semiconductor Manufacturing International Corp.)のような国の支援を受けたファウンドリーが、供給の安全性を確保するために低い歩留まりを受け入れている。その主な目的は「グローバルサウス」と「一帯一路」市場に手頃な価格のチップを提供することだ。だがこれにより、欧米が提示する価格を支払えない国や地域に「依存のわな」を作る可能性がある。

レガシーチップの価格競争が始まる

 高度なAIチップの競争に対する注目度が高い一方で、より直接的な経済変化が成熟ノード(28nm以上)のチップによって起きている。これらのチップは、自動車、産業機械、家電に不可欠なものだ。

 国内での技術進化とグレーマーケットでの調達によって設備不足が緩和されるにつれ、中国が2030年までに世界のレガシーチップ生産能力の30〜40%を占めるようになる可能性があるとアナリストらは予測している。深センでのブレークスルーにより、中国はこのサプライチェーンを武器として活用することに注力できるようになる。中国企業は、国の支援を受けたチップを市場に大量に投入することで、西側諸国のライバルが太刀打ちできないほど価格を下落させる可能性も否めない。

 こうした状況は、欧米の大手企業を厳しい立場に追い込んでいる。厳しいコスト圧力にさらされている自動車メーカーや家電メーカーは、安価な中国製チップの購入を余儀なくされるかもしれない。基礎電子機器のサプライチェーンに対する中国の支配力拡大は、AIの覇権争いと同じくらい深刻な戦略リスクである。

 ASML、ニコン、東京エレクトロン、キヤノンなどの既存サプライヤーにとって、中国国内の機械産業の成長は「悪夢のシナリオ」となっている。深センのプロトタイプには、仲介業者を通じて購入した中古装置の一部が使われており、露光装置の中古市場を揺るがしている。

 中国がさまざまな半導体製造装置を自前で作れるようになれば、これまで欧米のツールベンダーにおいて収益のかなりの部分を占めてきた中国市場は、最終的には閉鎖されることになるだろう。これを受けて、米国と日本は新規販売だけでなく、中国に設置されている既存装置の修理や保守、交換部品の供給についても規制を強化している。

 こうした措置は、中国の製造ラインの信頼性を低下させることを目的としている。世界のサプライネットワークはさらに分断され、中国は、拡大する“影のサプライチェーン”への依存をさらに強めることになる。

中国メーカーの現実は

 深センでの画期的な成果があったにもかかわらず、中国はチップの量産において、依然として大きな課題に直面している。現在、SMICは深紫外線(DUV)露光装置と複雑なマルチパターニング手法を用いて7nmチップを製造している。これは非常にコストが高く、SMICのウエハー1枚当たりのコストはTSMCよりも40〜50%高く、7nmチップの歩留まりは50%を下回っているとの報告もある。

 自由市場では通常、こうした非効率性はメーカーを倒産に追い込む要因となるが、中国では違う。政府がこうしたコストを負担することで、Huaweiのような主要企業の発展を支えているのだ。

 中国のEUV露光装置の目標は、高価なマルチパターニングの必要性をなくし、政府支援への依存から脱却して、商業的に採算が取れるようになることだろう。それが実現するのは恐らく2029年ごろとみられるが、中国の半導体業界は、戦略的目標と経済的現実のバランスを取るために、依然として多額の政府資金を必要とするだろう。

【翻訳、編集:EE Times Japan】

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