TIがSilicon Labsを75億ドルで買収する理由:NS以来の大型案件(2/2 ページ)
Texas Instruments(TI)が、Silicon Laboratories(Silicon Labs)を75億米ドルで買収すると発表した。無線接続やハードウェアセキュリティに特化したSilicon Labsの組み込みプロセッサを獲得することで、TIはIoTおよびエッジAI設計における存在感を高めるだろう。
TIのファブ拡大戦略とのシナジー
Silicon Labsの組み込みプロセッサは、MCUやMPUから進化を遂げ、現在では無線接続向けのSoC(System on Chip)へと特化しているが、今回の買収にはTIの最近のファブ拡張も関係している可能性がある。米国テキサス州シャーマンに新設されたTIの300mmファブは、同社が自社所有する製造ネットワークを強化するもので、Silicon Labsが有する1200種に及ぶ無線接続ソリューションの製造にも対応可能になる。
TIのプレスリリースでは「本取引によって、クロージング後3年以内に年間約4億5000万米ドルの製造および運用上のシナジーを創出できる見込みだ」と説明している。また、TIが保有する28nmノードを含むプロセス技術が、Silicon Labsの無線接続ポートフォリオに最適化されていることもリリースに記載している。
TIのファブ拠点拡張は、より効率的かつ迅速なプロセス技術設計サイクルの実現という戦略的狙いも伴っていて、これも今回の買収の重要な背景の1つとみられる。
それでもなお、エッジAIによる再活性化が進むIoT分野こそが、この75億米ドルの取引の最大の原動力だろう。TIは、自動車、民生、産業向けのアナログおよびミックスドシグナルチップを供給しているが、2025年に分岐点を迎えたエッジAIソリューションの波に乗るには、IoT分野での体制を整える必要がある。
エッジにも訪れるAIブームの波に乗るために
AIもまた、今回の取引における重要な要素だ。アナログ企業であれデジタル企業であれ、AIの潮流を無視することはもはや許されない。CES 2026では、Silicon LabsがAI技術を取り入れたBluetoothチャンネルサウンディングやワイヤレスモーター制御ソリューションを紹介ていた。さらに同社は最近、AIを活用したモジュール式ソフトウェアツール群を発表し、組み込みIoT開発に接続型インテリジェンスを取り入れることを目指している。
またSilicon Labsは、Wi-Fi 6およびBluetooth Low Energy(BLE)のコンボプロセッサにAI/機械学習(ML)アクセラレーターを搭載している。この専用アクセラレーターは、エネルギー効率に優れたML推論向けに最適化されていて、Arm Cortex-M4アプリケーションMCUの負荷を軽減する。オンデバイスでのAI/ML推論機能は、予知保全、環境モニタリング、異常検知、音声およびオーディオ認識、低解像度のビジョンなど、時系列データ処理を伴うMLモデルの実行に対応する。
過去数年間にわたるAIブームは、数々の買収劇を引き起こしてきたが、いよいよその波がエッジにも到達した。今回のTIによる買収は、エッジAIソリューションの実用性と、現代のMLワークフローに適合した新たなAIネイティブシリコンの登場を示す証左といえるだろう。Silicon Labsの買収は、TIの組み込みプロセッシングポートフォリオを補完すると同時に、同社が進めるエッジAIシリコンおよび関連SDKの取り組みにも寄与すると考えられる。
【翻訳、編集:EE Times Japan】
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