半導体CNT用いた高感度赤外線センサーを開発:従来材料比で感度は約11倍
京都工芸繊維大学と中央大学は、産業技術総合研究所(産総研)の協力を得て、半導体カーボンナノチューブ(CNT)を用い、冷却しなくても動作する「高感度赤外線センサー」を開発した。従来の材料を用いた場合に比べ検出感度は約11倍も高いという。
デバイス内部の欠陥検査やテラヘルツ・赤外線通信の受信素子などに応用
京都工芸繊維大学と中央大学は2026年2月、産業技術総合研究所(産総研)の協力を得て、半導体カーボンナノチューブ(CNT)を用い、冷却しなくても動作する「高感度赤外線センサー」を開発したと発表した。従来の材料を用いた場合に比べ検出感度は約11倍も高いという。
研究グループは今回、半導体型の単層CNTを高純度に分離し、p型とn型に制御した薄膜を組み合わせて、赤外線センサーを作製した。ナノチューブに赤外線が照射されるとプラズモン共鳴によって、光エネルギーが効率良く吸収されて温まり、局所的に温度が上昇する。P型とn型の境界部分に生じた温度差を利用して熱電変換を行い、電圧として取り出すことによって、赤外線の強さを電気信号として検出する。
実験の結果、金属的性質のナノチューブが混在する従来の材料を用いたセンサーに比べ、半導体ナノチューブのみで作製したセンサーは感度が約11倍になることが分かった。こうした性能が得られるのは、半導体ナノチューブが熱電性能に優れ、プラズモン共鳴によって、光エネルギーが効率よく吸収されるためだという。
今回は、「半導体型CNTの高純度分離技術」と「熱電性能を最大限に引き出す薄膜形成技術」「p型・n型ドーピング技術」および、「これらの電気特性を長期間安定に保つ封止技術」をトータルで確立した。実験では開発した赤外線センサーを用いて、パッケージ内部にある金属物体の形状を画像化できることを実証した。
開発した技術について研究グループは、空港などのセキュリティ検査を始め、製品内部の欠陥検査、医療やバイオ分野での診断、テラヘルツ・赤外線通信の受信素子などに応用できるとみている。
今回の研究成果は、京都工芸繊維大学材料化学系の野々口斐之准教授、山雄健史教授、稲田雄飛助教、中央大学理工学部の河野行雄教授、李恒助教および、産総研センシング技術研究部門製造センシング研究グループの鈴木大地主任研究員らによるものである。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
不溶性の配位高分子材料を「水の力」でフィルム化、熱電材料実現
京都工芸繊維大学と大阪工業大学は産業技術総合研究所の協力を得て、水と有機溶媒の混合液を用い、ニッケル−エテンテトラチオレート系配位高分子「poly(NiETT)」を自然にほぐす手法を発見した。この手法を用い安定したn型熱電フィルムの作製に成功した。
ルチル型二酸化ゲルマニウムによる初の縦型SBD開発
京都工芸繊維大学らの研究グループは、超ワイドバンドギャップ半導体の「ルチル型二酸化ゲルマニウム」を用いた「縦型ショットキーバリアダイオード(SBD)」の開発に初めて成功した。作製したSBDは、理想に近いダイオード特性と低オン抵抗であることを確認した。
新たな手法で半導体と金属界面の接触抵抗を測定
京都工芸繊維大学らの研究グループは、大阪大学産業科学研究所やトリノ工科大学らと協力し、半導体と金属など異なる材料間の界面における接触抵抗を直接比較できる、新たな「界面物性評価手法」を開発した。
光と磁石が強く結合 量子コンピュータを室温で操作できる可能性も
東北大学や京都工芸繊維大学らの研究グループは、磁性メタ原子をカイラルメタ原子に挿入して作成した人工構造物質(メタマテリアル)「磁気カイラルメタ分子」が、室温で極めて強く結合したマグノンポラリトンになることを確認した。
「筆で描いて」作れる非破壊検査センサー
中央大学は、カーボンナノチューブ(CNT)とビスマス化合物の特性を兼ね備えた、非破壊検査向け「PTE(光熱起電力効果)センサー」を開発した。ペースト化したビスマス化合物とCNT分散液を混合することで、スクリーン印刷による薄膜形成を可能にした。
低機能ロボット群をAIで高度知能化 月面での拠点構築を目指す
中央大学は「国際宇宙産業展」に出展し、低機能の小型ロボット群をAI(人工知能)によって高度知能化する技術を展示した。月面での探査や拠点構築に生かすことを目指すものだ。


