二次元半導体の折り畳み手法を開発、東京大学ら:液−液相分離による液滴を利用
東京大学と北陸先端科学技術大学院大学、筑波大学らの研究グループは、液−液相分離によって形成される液滴を用いることで、二重構造の遷移金属ダイカルコゲナイト(TMDC)を作製するとともに、モアレ構造の形成を確認した。
モアレ構造を有する大量のひねり二層構造を簡便に作製
東京大学と北陸先端科学技術大学院大学、筑波大学らの研究グループは2026年3月、液−液相分離によって形成される液滴を用いることで、二重構造の遷移金属ダイカルコゲナイト(TMDC)を作製するとともに、モアレ構造の形成を確認したと発表した。
TMDCは、原子3個分の厚みしかない物質だ。2枚のTMDCをずらして積層すればモアレ構造が現れる。この構造にすれば単層のTMDCでは見られない特性を示すという。ところがこれまでは、TMDCを1枚ずつ機械的に重ねて二重構造を作製しなければならず、作業効率が極めて悪かった。
そこで今回は、溶液処理によって基板上に用意した多数の単層二次元物質を、一度に折り畳むことで、モアレ構造を有する大量のひねり二層構造を簡便に作製できる手法を開発した。二次元物質を折り畳む手法として注目したのが液滴の表面張力である。液滴の凝集運動を駆動力にして折り畳めることが分かった。溶液を用いることで、モアレ構造を同時かつ大量に作製することが可能となった。
液滴の生成には、液−液相分離現象を用いた。具体的には疎水性の有機分子「トリフェニルホスフィン(PPh3)」と低級アルコール「2-プロパノール」および、水を特定の比率で混合した溶液を用いる。この溶液を乾燥させる過程で、マイクロメートルレベルの液滴が突然形成されることが分かった。この大きさの液滴が折り畳み手法に有効なことも確認した。
形成された折り畳み構造を透過電子顕微鏡で観察した。この結果、積層角に依存したモアレ構造が形成されていることを確認した。モアレ構造の制御には積層角の制御が重要となるが、折り畳み処理前に単層サンプルの形状を制御すれば、一定の確率で希望する方向に折り畳むことも可能だという。
今回の研究成果は、東京大学大学院総合文化研究科の四谷祥太郎博士後期課程学生と桐谷乃輔准教授、北陸先端科学技術大学院大学のLimi Chen博士後期課程学生(当時)と大島義文教授、筑波大学の丸山実那助教と岡田晋教授らによるものである。
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