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Musk氏は「半導体製造の再定義」を目指すのかTeraFabプロジェクト発表(2/2 ページ)

Elon Musk氏(イーロン・マスク氏)が発表した半導体複合施設「TeraFab」の建設プロジェクトが、大きな話題を呼んでいる。Musk氏はTeraFabで、半導体製造の「再定義」を狙っているのだろうか。

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「クリーンルームで葉巻」? Musk氏の発言の意図とは

 発表に先立ち、Musk氏は広く懐疑的な見解を招く発言をした。「クリーンルームの在り方は間違っていると思う。工場内でチーズバーガーを食べたり、葉巻を吸ったりできるようになる」(Musk氏)

 この発言を文字通りに受け取って、一蹴するのは簡単だ。クリーンルーム管理には正当な存在理由がある。汚染はウエハーの運搬だけでなく、装置の性能やプロセスの安定性、歩留まりなど、はるかに多くの要素に影響を及ぼすからだ。

 だが「ダーティーファブ(パーティクルだらけの工場)」という概念に注目していると、もっと興味深い可能性を見落としてしまう。真の破壊的な革新はダーティーファブではなく、「ダークファブ(無人工場)」だ。

 現代のファブは、人を中心に設計されている。人は、厳密に管理された空気質、安定した温度と湿度、照明、アクセス、安全システムを必要とすると同時に、汚染の主要な原因の1つでもある。1回の呼吸には数百万個の粒子が含まれている。クリーンルームシステムは、その大部分が、人間のオペレーターがいる場所で極めて高い純度を維持するように設計されている。

 人間を排除すれば、問題は変わる。汚染は部屋レベルから装置レベルに移行する。空調(HVAC)の要件を削減することができ、エネルギー消費量が減少する。連続運転が当たり前になる。レイアウトは、人ではなく機械を中心に最適化できる。

 たとえ物理的な環境が変わっても、より深い課題は依然として残る。それは、知識の構築プロセスだ。最先端ファブは、数十年にわたって蓄積された知見――歩留まり面での失敗やプロセスの調整、そしてひと握りの企業で集中的に蓄積されてきたエンジニアリングの暗黙知――を体現したものになっている。

 ここで、TeraFabは単なる自動化の話を超え、AIの物語へと変化する。

 あくまでも仮定の話だが、AI駆動システムが多数のプロセス実験を並列に実行し、人間のエンジニアよりも速くパターンを検出し、プロセス調整に関するフィードバックループをほぼリアルタイムで閉じることができれば、歩留まりの学習曲線自体が圧縮される可能性がある。これは、段階的ではなく、構造的な変化だ。

 歩留まり曲線が圧縮されれば、それに伴ってファブの経済性も変化する。

 最も近い例えは、自動車製造だ。

 過去10年間、特に中国における新規参入企業は、自動化レベルの向上、より緊密な統合、より速い反復サイクルを押し進めてきた。業界分析によると、エンジン車を作る従来の自動車メーカーの工場に比べ、開発コストと工場建設期間において大きな差が生じていることが示唆されている。

 こうしたメリットは、人件費の問題だけではない。システムアーキテクチャや統合の深度、バージョンアップのスピードにも反映される。高度に自動化された工場は、連続稼働が可能で、人間中心のインフラへの依存度を減らし、開発サイクルを短縮できる。

 問題は、はるかに複雑で繊細な半導体製造が同様の構造的変化を遂げられるかどうかだ。

 Musk氏は以前にも同様の試みを行ったことがあるが、結果は芳しくなかった。Teslaが「Model 3」の生産立ち上げ時に完全自動化を試みた「エイリアン・ドレッドノート(異星の戦艦)」は、現実世界の複雑さがロボットの能力を上回ったため失敗に終わった。同社は重要な工程で人的労働力を再導入せざるを得なかった。

 バッテリー製造は、さらに近い例といえる。「バッテリーデー2020」で野心的な目標を設定したにもかかわらず、4680セルの進捗は予想より遅れており、困難を極めている。製造、特に大規模製造は、単純化を拒むものだ。

 そして、半導体製造はさらに複雑である。

TeraFabが真に意味するものとは

 だが、TeraFabを従来のファブと比較して、失敗だと結論付けるのは、本質を見誤っている。

 より適切な見解は「TeraFabは実現不可能あるいは、半導体のコスト構造を根本的に変えるかのどちらか」ということだ。TeraFabが実現すれば、半導体のファブの経済性が変化し、規模拡大の制約が緩和され、業界構造が進化する。失敗すれば、現在のモデルは維持され、進歩は資本や設備、時間によって制約されたままになる。

 TeraFabは、単に新たな製造工場を建設するという賭けではない。製造工場の在り方そのものを変えるという賭けなのだ。これは、典型的なMusk氏のやり方ともいえる。成功するか、盛大に失敗するかのどちらかということだ。

【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】

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