ニコン、半導体露光装置で巻き返しなるか:ArF液浸スキャナーを安価に提供(2/2 ページ)
ニコンが、半導体製造装置の販売戦略の見直しを図っている。2028年までに、新型のArF液浸プラットフォームを発表する予定で、ASML製リソグラフィ装置との互換性も構築していくという。
ニコンの戦略 「弱点」は何か
まず、何人かの市場アナリストが指摘しているように、リソグラフィ装置の価格は、商用スペックとはほとんど無関係だという点がある。ニコンの液浸スキャナーの価格は、既にASMLの同等製品と比べて2桁パーセント低いが、それでもニコンの市場シェアは依然として縮小しているという。
これが、ニコンがASML製スキャナーに技術的に匹敵する、全く新しい液浸スキャナープラットフォームの開発を目指す理由の1つである。ニコンの次世代スキャナーは、ASMLのマスクミラーリングに対応すべく、新しい投影レンズを搭載するという。ニコン製スキャナーの既存マスクは、ASML製品で共有することができない。
また、この次世代スキャナーは、新しいウエハーステージを導入する予定で、ウエハーステージのハードウェアを修正できるようになるため、ファブは複数種類のスキャナーを使わなくて済むという。しかし前述のように、この新型スキャナーは、2028年に発表予定のため、競争の激しいリソグラフィ分野ではその間にさまざまな状況変化が起こる可能性がある。
次に、定着要因が挙げられる。TSMCのようなファブには、ASMLとの長年にわたる協業実績があり、ASML製部品/システムを自社の製造エコシステムに統合する上で、高度な技術的専門知識を確立してきた。もし、安価な装置があるとしても、導入に2倍のコストが掛かる、必要な歩留まりを達成できない、といった事態があるとしたらどうだろうか。
最後に、多くの業界関係者が指摘しているように、ニコンの浮き沈みは、過去約20年間における日本の半導体業界全体の事象を反映しているという点がある。振り返ってみると、キヤノン/ニコンのような日本の半導体/半導体装置メーカーは、ともに衰退してきた。ニコンはこの減速傾向を覆すことができるのだろうか。
リソグラフィが急速に進化を遂げる中、ニコンは、大手サプライヤーや研究機関との密接な連携による復活実現に賭けて出た。しかし、リソグラフィ業界におけるASMLの「勝者独占」ストーリーを覆すことは可能なのだろうか。特に、DUVをめぐる競争において、世界各国で8000台超の半導体リソグラフィシステムが設置されている紛れもないリーダーであるASMLに敗北した後でだ。
それでも、ニコンには方向転換が必要だ。販売価格約8250万米ドルのASML製最先端ArF液浸システムに、チャンスを見いだすことができる。それに加え、全てのEUV装置には通常、数台のDUV装置が付属するという事実もある。また、ニコンの積極的な価格競争への戦略転換により、半導体メーカーはより効果的にASMLとの交渉を進められる可能性がある。
ニコンは自らを、ASMLのみへの依存を避けたいと考えている半導体ファブにとっての“セカンドソースオプション”として位置付けている。ニコンが今後、装置の低価格化とセカンドソースオプションでファブを引き付けられるかどうか、注目していきたい。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
中国が「半導体製造装置の自給自足」に苦戦している理由(前編)
中国が国内半導体メーカーに対し、新工場を建設時に前工程製造装置(WFE)全体の少なくとも50%を国内メーカーから調達することを実質的に義務付けていると報じられた。だが、この措置で中国は本当に国内WFE産業を加速できるのか。
SCREENがニコンのウエハー接合技術を譲受 先端パッケージ領域の成長図る
SCREENホールディングスは2025年10月31日、ニコンのウエハー接合技術に関する研究開発事業を、同年9月30日付で譲受したことを発表した。半導体先端パッケージ事業の成長を図るためのもので、本譲受によって接合技術の向上、分野におけるプレゼンスを確立するとしている。
L/S 1.5μmでも高精度に一括測定 ニコンの画像測定システム
ニコンは「SEMICON Japan 2025」で、微細な3次元形状を高速かつ高精度に測定できる画像測定システム「NEXIV VMF-Kシリーズ」を展示した。半導体パッケージ基板の検査や品質管理などの用途を想定する。
キヤノンと日本シノプシスがRapidusに委託へ
キヤノンと日本シノプシスは2026年3月3日、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の公募事業に採択された次世代半導体の設計技術開発プロジェクトに参画すると発表した。両社はRapidusの2nm GAA(Gate All Around)プロセスを活用する。
AIデータセンター投資は既に破綻しているのか
AIデータセンターへの投資は異常なほど過熱している。だが、この分野の投資はGPU/広帯域メモリ(HBM)/電力コストなどの要素と制約が絡み合い、ある「ライン」を超えると一気に崩壊する可能性が高い。今回は、GPU/HBM/電力コストから「AIデータセンター投資の破綻ライン」を逆算してみる。