転写プロセスに頼らない集積回路用プラットフォームへ道筋、東大ら:性能低下していた要因も解明
東京大学は、物質・材料研究機構(NIMS)や名古屋大学と共同で、サファイア基板上に二次元半導体を直接成長させたウエハー上で、トランジスタを動作させることに成功した。これまで性能が低下していた要因も解明した。
独自の「完全ドライ界面制御」で、従来のボトルネックを解消
東京大学大学院工学系研究科マテリアル工学専攻の長汐晃輔教授らによる研究グループは2026年7月、物質・材料研究機構(NIMS)や名古屋大学と共同で、サファイア基板上に二次元半導体を直接成長させたウエハー上で、トランジスタを動作させることに成功したと発表した。
従来は別基板への転写工程が必要だったが、今回はサファイア基板上で直接デバイスを形成し、良好なトランジスタ動作を実証した。さらに、これまでトランジスタ特性を劣化させていた要因も明らかにした。
微細化が進むシリコン半導体において、新たなチャネル材料として二次元半導体が注目されている。中でも、二硫化モリブデン(MoS2)は、原子層レベルの薄さと優れた電気特性を兼ね備えていて、次世代ロジック半導体に向けた材料として期待されている。ところが、転写プロセスによりMoS2を別の基板に貼り替える従来方法だと、デバイスの信頼性が低下するなど課題があった。
そこで研究グループは、MOCVD(有機金属化学気相成長)法を用いサファイア基板上に成長させた単層MoS2単結晶上に直接、トップゲートトランジスタを形成した。しかし作製したデバイスは、強い電子ドーピング状態となっていて、ゲート電圧を印加しても電流を十分に遮断できなかったという。その原因を調べたところ、サファイア界面に硫酸由来層と水分子が形成されていることが分かった。これらが、MoS2を過剰に電子ドープしているとみている。
こうした課題を解決するため今回は、400℃のH2/Arアニール処理を行う乾式界面制御手法を採用した。独自の「完全ドライ界面制御」によって、MoS2/サファイア界面のトラップされていた硫酸基や水分子を、効果的に外部へ脱離させることに成功した。この結果、界面種を選択的に除去し、良好なトランジスタ動作を実現した。
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