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株価爆騰・キオクシアの「これまで」と「これから」を考える大山聡の業界スコープ(102)(3/3 ページ)

株価が急騰したキオクシア。その背景には、AIの主戦場が学習から推論へ移り、SSD需要が急拡大したことがある。東芝時代からの歴史を振り返りつつ、同社の強みと今後の針路、日本の半導体政策の課題を考察する。

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日本政府の本音はどこにある?

 このキオクシアの躍進ぶりは日本政府としても非常に喜ばしく思っているに違いない。しかし筆者としては、気になる点も存在する。

 WDへの売却が実現していたら、キオクシアは米国籍企業になっていたことになる。上場市場も東証ではなくNASDAQになっていただろうから「キオクシアの時価総額がトヨタを抜いて日本一になった」などという報道もなかっただろう。しかし当時の日本政府は、工場は日本にあるのだから、実質的には日本のメーカーだ、ということで売却を容認していた。

 すでに述べたように、フラッシュメモリはNOR型もNAND型も東芝が発明したもので、基本特許の大半は東芝(現・キオクシア)に帰属する、と言っても過言ではない。1つのメモリセルに多くの値を持たせる「MLC/TLC/QLC」や、3次元の「3D NAND構造」なども東芝が発明した技術である。こうした知財も含めて、日本政府は「米国企業が求めるなら買収は阻止しない」というスタンスだったのだ。それが日本政府の本音なのか? 工場さえ日本にあれば良いのか? この辺りに釈然としないのは筆者だけではないだろう。

 筆者は「全く信用していない」ものの、「買収話はSK Hynixの阻止によって破談となった」と日本政府が主張するならば、日本政府は「あの時はありがとう」と、SK Hynixに強い感謝の意を表明すべきではないだろうか。例えばSK Hynix が日本に工場建設を計画するのであれば、積極的に補助金を使って誘致するくらいの謝礼があっても不思議ではないはずだ。

 日本政府は「AIの普及とともに、半導体需要はさらに活性化する」とコメントしている。昨今の市況を見る限り、特にメモリとロジックへの需要が増えることは十分に考えられよう。ちなみに日本には先端のDRAMを生産する工場は存在するが、DRAMメーカーは存在しない。さて日本政府はこの状況でも満足なのか、それとも日系企業によるDRAM事業が必要、と考えるのか。仮に恩人であるSK Hynixが「日本にDRAM製造ラインを持ちたい」と言ってきたら、政府はどうするのか。筆者としては、キオクシアにDRAM市場に参入してもらいたい、とも考えているのだが、いかがなものだろうか。この議論はどこか別の場所で、じっくり展開してみたいものである。


連載「大山聡の業界スコープ」バックナンバー

筆者プロフィール

大山 聡(おおやま さとる)グロスバーグ合同会社 代表

 慶應義塾大学大学院にて管理工学を専攻し、工学修士号を取得。1985年に東京エレクトロン入社。セールスエンジニアを歴任し、1992年にデータクエスト(現ガートナー)に入社、半導体産業分析部でシニア・インダストリ・アナリストを歴任。

 1996年にBZW証券(現バークレイズ証券)に入社、証券アナリストとして日立製作所、東芝、三菱電機、NEC、富士通、ニコン、アドバンテスト、東京エレクトロン、ソニー、パナソニック、シャープ、三洋電機などの調査・分析を担当。1997年にABNアムロ証券に入社、2001年にはリーマンブラザーズ証券に入社、やはり証券アナリストとして上述企業の調査・分析を継続。1999年、2000年には産業エレクトロニクス部門の日経アナリストランキング4位にランクされた。2004年に富士通に入社、電子デバイス部門・経営戦略室・主席部長として、半導体部門の分社化などに関与した。

 2010年にアイサプライ(現Omdia)に入社、半導体および二次電池の調査・分析を担当した。

 2017年に調査およびコンサルティングを主務とするグロスバーグ合同会社を設立、現在に至る。


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