AI需要でシリコンフォトニクスに「300mmウエハー化」の波:STは「PIC100」展開強化(3/3 ページ)
AIの急速な普及は、シリコンフォトニクスの世界にも影響を及ぼしている。より高速なデータ通信への要求が高まるにつれ、シリコンフォトニクスの需要が増え、300mmウエハーへの移行が急がれているのだ。
Sicoyaの戦略
ドイツ ベルリンに拠点を置くフォトニクスメーカーSicoyaは、そのようなプラットフォーム戦略によって実現可能な初期段階の事例を示している。
Sicoyaは、2026年3月に開催された光通信の国際学会「OFC(Optical Fiber Communication Conference) 2026」において、1.6T DR8動作をターゲットとする、PIC100ベースのOSFPモジュールを披露した。これは実際、1レーン当たり200Gbpsで、8レーンが動作するという。同社のCTO(最高技術責任者)兼マネージングディレクターであるHanjo Rhee氏は「このモジュールは、スケールアウトネットワークを対象とし、クラウドデータセンターで使われているプラガブルアーキテクチャの継続を目指すものだ」と述べる。
このデモでは、STのPIC/EICの両方が使われた。Sicoyaは、トランスミッター/レシーバーの両機能を備えるトランシーバーPICと、独自設計のトランスインピーダンスアンプ(TIA)を設計した。TIAは、PICの上部にダイスタックされ、フォトダイオードと増幅器の間の接続距離を非常に短くすることができる。
Rhee氏はEE Timesに対し、「このデモでは、このようなプラガブルに向けてより複雑なフォトニクス製品を実現可能であることや、それをSTのプラットフォームで実現できることなどを実証できた」と述べた。
その重要性は、技術的/工業的な側面にある。Sicoyaはかつて、小規模なファウンドリーパートナーとの協業により、独自モジュールを開発していたが、そのファウンドリー能力が制約要因となっていた。そのため同社は、PICや電子回路(EIC)および、それを積層(ダイスタッキング)したデバイスをはじめとする、チップレベルの製品への移行を進めてきた。
Rhee氏は「市場は量産可能な新たなシリコンフォトニクスプラットフォームを熱望している」と述べている。Tower Semiconductorはフォトニクス分野で大きな生産能力を有しているが、その多くは200mm製造をベースとしており、受注が殺到しているという。TSMCも製品を提供しているが、入手は容易ではない。STの300mmプラットフォームは、Sicoyaのような企業に量産可能なファウンドリパートナーを提供する。
Sicoyaのデモは、シリコンフォトニクスの産業化が光デバイスだけにとどまらない理由も示している。その価値の多くは、PIC、EIC、パッケージ、制御機能がどのように統合されるかにある。
Rhee氏によると、Sicoyaは意図的にダイスタッキングを選択したという。同社はこれまで、EICとPICを同一チップ上に集積するモノリシック集積を採用していた。このアプローチはRF経路を非常に短くし、良好な信号整合性を実現するが、開発サイクルやファウンドリーの生産量に制約が生じる。同氏は「ダイスタッキングはより良い選択だ。EICとPICを近接させることができるからだ。さらに、拡張可能なファウンドリープラットフォーム上で実現でき、技術の更新もより迅速に行える」と述べている。
信号経路を短くすることで、寄生容量を低減し、性能を向上させることができる。また、モジュールメーカーの作業も簡素化できる。EICとPICの間で制御ループが内部的に動作すれば、モジュールメーカーは外付けマイコンの制御機能を管理する必要がなくなる。
Rhee氏は、フォトダイオードにつながる導波路に統合された可変光減衰器を例に挙げた。この減衰器は、PICの上部に配置されたTIAによって制御され、フォトダイオードが受光する光強度を制限できる。これにより、過剰な光強度による受信経路の過負荷を防ぎ、受信感度とビット誤り率の挙動を改善できるという。
「これはダイスタック内に実装できる機能だが、より大きなパッケージやチップセットでは効率的に実装することはできない」と同氏は述べている。
光学部品がプラガブル式からNPOやCPOへと移行するにつれ、こうしたパッケージングの課題はさらに重要になってくる。Rhee氏は「スイッチASICやGPUに近づけることで、電気経路が短くなりリタイミングの必要性が減るため、場合によってはDSPが不要になる可能性がある。しかし、これには、フットプリント、コネクター設計、量産での組み立てが難化するという側面もある」と述べている。
大きな課題の1つは、光エンジンをメインボードにはんだ付けする際に、光学部品をどのように取り付けるかという点である。従来の光コネクターは、リフローはんだ付けの前に接着しておけばいいという単純なものではない。光コネクターがリフローはんだ付け工程に耐えられない可能性があるためだ。Rhee氏によれば、大手パッケージングメーカーは現在、着脱式の光コネクターや大量生産のNPOおよびCPOアセンブリ向けのアプローチに取り組んでいるという。
STにとって、PIC100が半導体プラットフォームのように拡張できることを証明するのは、大きな優先事項の一つである。一方、Sicoyaにとっては、高密度パッケージングとダイスタッキングによって、プラットフォームを実用的な光エンジンに変えられることを示すのが先だ。
AIデータセンターはフォトニクスの需要をけん引しているかもしれないが、同市場の次なる段階を制するのは、フォトニクスを産業化できる企業になるだろう。
【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
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