DRAM撤退から40年、Intelがメモリ再挑戦か:「XBM」「ZAM」で回帰を模索(3/3 ページ)
半導体メモリのパイオニアとして創業し、1985年にDRAM事業から撤退してCPUへ軸足を移したIntel。同社が今、AIの普及によって大きく変化するメモリ市場への回帰をうかがわせている。Intelとメモリの半世紀にわたる歴史を振り返りながら、新たに開発を進める「XBM」「ZAM」と、メモリ事業への本格復帰に向けた課題を探る。
再挑戦の切り札「XBM」と「ZAM」
Tan氏が力を入れているメモリアーキテクチャ革新のプロジェクトについては依然として詳細が不明だが、Intelが進める2つの新たなメモリ技術、XBM(Cross-Batch Memory)とZAM(Z-Angle Memory)が注目を集めている。現時点でZAMは2029〜2030年、XBMは2030年代初頭に発表される可能性がある。
XBMはバックエンドトランジスタを備えた超広帯域メモリで、HBM4と同等のフットプリントとなるように設計されている。DRAMの製造方法と接続方法を根本から見直すものだ。
HBMでは、シリコンインターポーザーを介してホストプロセッサと接続する。この方式はコストがかかるうえ、パッケージ寸法にも制約が生じる。さらに現在、その組み立てのほぼ全てをTSMCの先端パッケージング技術「CoWoS(Chip-on-Wafer-on-Substrate)」に依存している。
これに対しXBMでは、インターポーザーを介して信号を伝送する代わりに、データをシリアル化してUCIe(Universal Chiplet Interconnect Express)リンク上で送受信する。さらに、従来のDRAMでは1トランジスタ/1キャパシター(1T1C)のメモリセルをフロントエンドのシリコン層に形成するのに対して、XBMではこれらをBEOL(Back End of Line)に配置する。これによりフロントエンドのシリコン領域を空け、より多くのTSV(Through Silicon Via)を形成できるようにする。
一方、ZAMはIntelがソフトバンク傘下のSAIMEMORYと共同開発しているメモリアーキテクチャだ。フュージョンボンディングを用いて、各層の間に厚さ約3μmのシリコンを挟みながら、ほぼ従来型のDRAMを9層積層する。HBM4のおよそ2倍の帯域密度を目指している。
メモリ本格復帰には製造インフラも課題
1985年にメモリではなくロジックを選んだIntelは、再びメモリ事業の原点へと向かいつつある。XBMとZAMへの取り組みは、その方向転換を象徴するものだ。AIによってメモリ市場が大きく変化したことを踏まえれば、こうした動きには合理性がある。ただし、Intelがメモリ事業に本格的に復帰するには、メモリアーキテクチャのイノベーションだけでは不十分だ。例えば、メモリチップを製造するためのインフラも必要になる。また、これまでメモリ市場への参入で何度も成功を逃してきたという心理的な重荷もある。
Intelのメモリ事業への野心については、今後さらに詳細が明らかになるとみられる。それによって、同社がメモリ事業でどの程度の存在感を示せるのかも見えてくるだろう。
同時に、ファウンドリー事業やAI向けCPUの研究開発に多額の資金を必要としているIntelが、メモリ事業への本格復帰という大規模な取り組みをどのように実行するのかも問われることになる。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「ZAMで再び日本にメモリ技術基盤を」 SAIMEMORYの構想とは
ソフトバンク100%子会社のSAIMEMORYが開発を進める次世代メモリ「ZAM(Z-Angle Memory)」。DRAMを立てて、横に並べていく垂直ビルド構造が特徴的だが、その起点はIntelの次世代メモリ基盤技術にあるという。ZAMの詳細をSAIMEMORYに聞いた。
ソシオネクスト、AI/HPC向けSoC開発にIntel 18A-P採用
ソシオネクストはAI、データセンター、高性能コンピューティング(HPC)向けのカスタムSoC(System on Chip)開発に当たり、米Intelの1.8nm世代プロセス「Intel 18A-P」を採用すると発表した。ソシオネクストが培ってきたASIC開発の知見と、Intel Foundryの先端プロセスおよびパッケージング技術を組み合わせて、顧客のSoC開発を支援するという。
Intel復活なるか、見え始めた兆し
Intelの2026年度第2四半期(4〜6月期)の業績は好調だった。Intelは最も苦しい時期を脱しつつあるのだろうか。今回の業績を見ながら考察してみたい。
「ファウンドリーの実力」試されるIntel
Intelの2026年第2四半期(4〜6月期)の決算では、Intel Foundryが回復基調にあることを示すものとなった。Intelは、ファブレス半導体メーカーにとって「TSMCとは別の選択肢」となり得るのか。Fortinetとの協業はその実力を問う試金石となるかもしれない。
ムーア氏も予見していたチップレット集積 AI時代に重要性増す
横浜国立大学 教授の井上史大氏は、2026年6月に開催された「SEMISOL 2026」の基調講演で、AI時代における後工程技術の重要性が高まっていると強調した。ゴードン・ムーア氏も約60年前に、チップを分割して接続する考え方のコスト優位性を示唆していたという。
