SiC IC実用化へ前進! 6インチ全面でJFET作製、京大:中心部でしきい値電圧のばらつき0.07V以下
京都大学とフェニテックセミコンダクターらは、6インチ炭化ケイ素(SiC)ウエハー全面にn型/p型の接合型電界効果トランジスタ(JFET)を一括作製し、正常動作を確認した。ウエハー中心部では、しきい値電圧のばらつきを標準偏差0.07V以下に抑えた。高温環境向けSiC集積回路(IC)の実用化に向けた成果だという。
京都大学大学院工学研究科 准教授の金子光顕氏、同教授の木本恒暢氏、フェニテックセミコンダクターらの共同研究グループは2026年9月、直径6インチの炭化ケイ素(SiC)ウエハー全面に、n型/p型の接合型電界効果トランジスタ(JFET)を一括作製し、正常動作を確認したと発表した。
ウエハー中心部の直径90mmの領域では、トランジスタのしきい値電圧のばらつきを標準偏差0.07V以下に抑えた。研究グループは、極限環境で動作するSiC集積回路(IC)の実用化に向けた「重要な技術的マイルストーン」だとしている。
研究成果は、2026年9月27日〜10月2日に開催されるSiC関連の国際会議「International Conference on Silicon Carbide and Related Materials 2026(ICSCRM 2026)」で発表する。
極限環境向けに期待されるSiC
シリコン(Si)製ICは現在広く用いられているが、約300℃を超えると正常に動作せず、高温環境での使用には適さない。そこで、極限環境で動作する次世代半導体として、耐熱性に優れたSiC製ICの研究が進んでいる。
京大の研究グループは、ゲート電極と半導体の間に酸化膜を用いないJFETに着目。n型JFETとp型JFETを組み合わせた相補型JFET(CJFET)を用いることで、低消費電力の高温動作ICの実現を目指している。これまでにSiC小片上でCJFETによる論理ゲートを作製し、350℃での動作を実証していた。
一方、実用化に向けては、小さな試料上での試作から、ウエハー全面に多数のトランジスタを均一に作製する工程への移行が必要だった。
6インチ全面にn型/p型JFETを一括形成
今回、選択的イオン注入を用いて、6インチSiCウエハー全面にn型/p型JFETを一括作製した。トランジスタ間の電気的な分離には、研究グループがこれまで開発してきたウェル構造による絶縁を採用した。
作製したn型/p型JFETはいずれも正常に動作した。ウエハー中心部の直径90mmの領域に配置した多数のトランジスタを評価したところ、しきい値電圧のばらつきは標準偏差0.07V以下と、高い均一性が確認できた。
イオン注入時のマスクパターンによって決まるチャネル厚さを変化させた評価では、チャネル厚さによってしきい値電圧を制御できることも確認した。実測値は物理モデルによる計算値とよく一致したといい、トランジスタ設計の予測性も確認できたとしている。
今後は複雑な回路の集積へ
研究グループは今回の成果について、SiC CJFETを用いた高温ICの実用化に向けた重要な成果と位置付ける。6インチウエハーでの一括作製は半導体産業で使われているプロセスとの親和性も高く、SiC ICの産業応用につながるとしている。
金子氏はSiC LSIの事業化に向けた取り組みも進めている。EE Times Japanが2026年5月に実施したインタビューで、2025年度にウエハースケールでのデバイス動作を検証したことや、2026年度以降は実用的な回路の試作を進める方針を示していた。2028〜2029年ごろに、最初の製品として高温環境向けA-Dコンバーター(ADC)のサンプル出荷を目指すとしている。
研究チームは今後、今回確立したウエハースケールの作製技術を用い、より複雑な論理回路や実際の制御回路の集積を進める。ジェットエンジンや発電用ガスタービン、地熱資源開発、金星探査などへの応用を見込む。
実用化に向けては、ウエハー外周部を含めた全面での均一性向上や、高温環境での長期信頼性の検証、耐熱パッケージ/周辺回路材料の開発などが今後の課題になるとする。
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