Appleの「A9」プロセッサ、主要サプライヤはTSMCに?:Samsungの歩留まりが懸念されているのか
2015年、Appleは次期「iPhone」に向けて、「A9(仮称)」プロセッサの生産を加速すると考えられる。A9の主要サプライヤとなるのは、当初はSamsung Electronicsだと見られていたが、14nm FinFETの歩留まりの問題から、SamsungではなくTSMCになるとの見方がある。
ある情報筋によると、Appleの次世代プロセッサ「A9(仮称)」の主要サプライヤとなるのは、最先端プロセスで歩留まりの問題を抱えているSamsung Electronicsではなく、TSMCだという。
情報筋によれば、Appleは次期iPhone「iPhone 6s(仮称)」向けにA9の生産を加速するとしており、「Appleは当初、A9の生産量の80%をSamsungに、残りをTSMCに委託していたとされている。だが現在、この割合が逆になったようだ」と、EE Timesに明かした。
BernsteinのシニアアナリストであるMark Li氏は2015年3月20日付のリポートで、「われわれは、TSMCは、A9の生産量の40%を受注するのではないかと見ている」と述べている。
TSMCの売上高で、16nmプロセスを適用して製造したチップが占める割合は、2015年第3四半期では3%、同年第4四半期では12%に増加すると、Li氏は予測している。
TSMCのコーポレート コミュニケーションのディレクタを務めるElizabeth Sun氏は、コメントを拒否している。
業界関係者の見方は、おおむねLi氏の見解と一致するようだ。つまり、A9の製造ではTSMCがSamsungよりも多く受注するということである。半導体製造装置サプライヤのある人物が、匿名を条件に次のように語っている。「韓国にいる同僚によると、TSMCは、A9において全体の2/3、あるいはそれ以上の生産を請け負うという。TSMCの16nmチップの歩留まりが、Samsungの14nmチップよりも高いからだ」。
TSMCとSamsungは、AppleやQualcommから受注したFinFETの製造において、互角の戦いを続けている。2014年半ばの時点では、Samsungの14nm技術が、TSMCの16nm技術を押さえて優位に立ったかに見えていた。
TSMCは、Appleの受注量に、どのように対応するのだろうか。前出した情報筋は、「TSMCは生産能力を適宜、割り当てることができる。さらに、万が一の場合は製造装置メーカーに協力を頼むことも可能だろう」と推測している。「製造装置メーカーは、一般的にTSMCをサポートしようとしている。TSMCに問題が発生するとは思えない」(情報筋)。
20nmチップの売上高は低下する懸念が
ただし、A9の製造についてはTSMCが有利な立場にいるかもしれないが、20nmチップの製造では、Samsungがシェアをより高める可能性も否定できない。Li氏によると、Qualcommの次世代20nm SoC「Snapdragon 810」が過熱すると指摘された報道の影響は、当初考えられていた以上に大きくなっているようだ。Qualcommは、TSMCで20nmチップの製造を削減しただけでなく、14nm/16nmプロセスへの移行を急いでいるという。
Li氏は、「Samsungは、Qualcommの主要サプライヤになるべく、14nm/16nmチップの量産体制を整えている」と見ている。
Qualcommからの受注は、TSMCにおいて、2015年の20nmチップ需要の40〜50%を占めている。そのため、もしQualcommが20nm以降のプロセスに移行すると、20nmチップの売上高は大幅に減少することになると、Li氏は指摘する。TSMCは、2015年は、20nmチップの売上高が四半期ごとに増加すると予測しているが、同社の20nmチップの売上高は、おそらく2014年第4四半期がピークとなるだろう。
【翻訳、編集:EE Times Japan】
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