コラム
EE Times Japanは、創刊10周年を迎えました:『EE Times Japan 10周年』特別編集(2/2 ページ)
2015年6月、EE Times Japanは、読者の皆さまに支えられて、創刊10周年を迎えることができました。紙媒体から出発し、オンラインニュースサイトとして落ち着くまでに紆余曲折はありましたが、次の10年に向けて、日本のエレクトロニクス業界の発展に少しでも貢献すべく、まい進していきたいと思います。
表紙画像に隠された秘密は、これだ!
答えは、
回路記号が隠されている
でした!!
せっかくなので中身も振り返る
これまたせっかくなので、中身もパラパラっとのぞいてみましょう。10年前のエレクトロニクス業界について、皆さまの頭にパッと思い浮かぶことは何ですか?
2005年7月号(創刊号)
- 特集はアナログ技術。「アナログ回路設計者は、デジタル技術を使いこなすことが求められる」
- Atheros(当時)が、携帯機器向けに無線LANチップを発売。低消費電力が特長で、送信時600mW、受信時400mW
- NHK放送技術研究所が「ハイビジョン放送の表示が可能な、15インチクラスの曲がるテレビを6〜7年後に投入したい」と述べている
- 中国における日本の家電メーカーの知名度は、ソニーが圧倒的。ソニーの好感度が非常に高く、支持率は65%に達していた
- 当時は、まだルネサス テクノロジ
◇関連記事:ルネサス作田会長「無事、取りあえず生き残れた」――成長は後任に委ねる
2005年8月号
- 特集は、特定有害物質使用制限規制である「RoHS」。部品メーカーや材料メーカーに多くの負担を強いたRoHSだが、その有効性については2015年現在でも検証が足りなく、疑問視されている
- 次世代メモリ特集。FRAM(強誘電体メモリ)、MRAM(磁気メモリ)、RPAM(相変化メモリ)に焦点が当てられている。「エルピーダメモリ」の表記もちらほら見られる。期待が大きかったことが分かるが、いずれも量産化されているにもかかわらず、2015年現在でも、まだ“次世代メモリ”の域を出ていない
◇関連記事:“次世代メモリ”の域を出ないFRAM、量産規模を上げて低価格化を
2005年9月号
- 特集はプリント基板開発の最前線。記事では、特に注目すべき事項として「チップ間の接続技術」が挙げられている。新たな信号配線技術として「オーバー・ザ・トップ(OTT)ルーティング方式」が紹介されている。基板配線ではなく、ストリップラインなどを使ってLSIパッケージ同士を接続するというもの
- エンジニアの意識調査。日本のエンジニアの平均年齢は42歳で、平均年収は745万円だった。米国は平均44歳で、平均年収は1040万円。ちなみに2011年の調査では、日本のエンジニアの平均年齢は47歳、年収が717万円だった*)。
*)2005年の調査:EE Times Japanの読者を対象に調査。有効回答者数は783人。
2011年の調査:EE Times Japanの読者を対象に調査。有効回答者数は993人。
- DRAMメーカーの技術力を検証。このころからNAND型フラッシュメモリの微細化はSamsung Electronicsが先行していて、既に90nmプロセスを用いてDDR2対応品を製造している。一方で、競合他社は110nmプロセスで製造していた。2015年現在、NANDフラッシュの微細化は1Xnmプロセスが限界とみられていて、それ以降は3次元NANDフラッシュの方向に進むとされている
◇関連記事:2019年までのストレージ市場を展望する
2005年10月号
- 特集はDFM(Design For Manufacturing)。当時の最先端プロセス(量産の)は90nm。さらに65nmプロセスでの量産を控えていて、「システムLSIの歩留まりをいかに改善するのか」が、早急に取り組むべき課題となっていた
- 計測器メーカーが待ち望んでいた「PXI Express」が登場
- 次世代トランジスタ特集。当時は、プレーナ型MOSFETが、リーク電流の点で大きな課題に直面しているころだった。完全空乏型SOI(FD-SOI)は「有効」とされ、FinFETが目玉的な存在として注目されていた。記事では32nmプロセスまでの話しか出ていない。7nm、5nmのレベルまで微細化が進むとは思っていなかったのかもしれない
◇関連記事:ムーアの法則、50年をたどる
2005年11月号
- 特集はバイオニック技術。人体に電子装置を埋め込むことで、身体機能の衰えなどを改善しようとするものだ。2015年現在、同分野の技術は、倫理的な問題はあるものの、発展し続けている。フレキシブル基板の開発やICチップの小型化、無線通信技術の進化などが、バイオニック技術を支える要素となっている
- 「賢いゴルフ・クラブ」の分解記事。現在のIoTの波につながるような技術である。取り上げられているのは米国のSmartSwingの「Intelligent Club」だ。クラブをスイングした時の速度や加速度などを分析できる。SmartSwingをWebで検索してみたところ、Interactive Frontiersという会社に買収されていて(2006年に?)、もうこの製品は入手できないようだ
- 「CEATEC JAPAN 2005」リポート。「液晶対プラズマ対SED」「Blu-ray Disc対HD DVD」「2次電池対燃料電池対キャパシタ」といった対決の構図があちこちで見られたようだ。ディスプレイの勝負の土俵は、フルHDである。現在の状況をみれば、この勝負は液晶が制したことになる
◇関連記事:もはやSFではない“サイボーグ”技術
以上、創刊から5号分をざっと振り返ってみました。「液晶パネル対プラズマ」「65nmプロセス時代を控えている」など、現在とはだいぶ異なるものもあれば、次世代メモリや、トランジスタのリーク電流問題など、本質的な課題がいまだに残っている分野もあります。これまでの10年で変わったもの、そして変わらずに残っているものが今後10年でどうなっていくのか――。その進化に思いをはせるのも、また一興かもしれません。
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