スマートホームは半導体業界を救えない?:普及はまだ遠く(3/3 ページ)
半導体業界の次なる“けん引役”をスマートホームに期待するのは、だいぶ早いようだ。GoogleやSamsung Electronicsなどが投資している分野ではあるものの、多くの一般消費者は、スマートホームの設定や接続がうまくいかずに諦め気味になっているという。
消費者の興味が薄れている
Argus Insightsは、多くの市場調査会社とは異なる独自の手法を用いて調査を行っている。一般的には、売上高や出荷数量といった数字を追跡して市場予測を行うが、Argus Insightsは、消費者のレビューを分析することによって需要を予測するという。Feland氏は、「これはもともと、米スタンフォード大学が2000年に独自に生み出した手法だ。マインドシェア(ブランドなどの注目度)によって需要を予測できるということを実証している」と述べる。
この手法は、特にコネクテッドホーム市場の初期の段階において、従来の市場売上高データに基づいた分析と比べて、より多くの洞察をもたらしたという。
Argus Insightsは、最新リポート「What Makes a Smart Home a Happy Home, September 2015(「スマートホーム」を「ハッピーホーム」にするには[2015年9月])」を発表する以前に、2015年6月にもホームオートメーションに関するリポートを発表している。その中で同社は、次のように警告している。
「データの分析結果から、サーモスタットや電球、ロック、センサー、カメラなどといったコネクテッドホーム関連の機器における消費者需要は、2015年5月の時点で初めて減少に転じ、2014年を下回る水準に下がっていることが分かった。これは、消費者の興味が停滞しているという兆候を示す」
Argus Insightsは、2015年5月時点でのコネクテッドホームに関する同社の独自データから、「実際のところ、各種機器に対する消費者の興味は、1年前と比べて15%低下している。あらゆる種類のスマートホーム機器に対して関心が失われるという問題が生じている」と指摘する。
Feland氏によると、さまざまな種類のコネクテッドデバイスの中でも、消費者のマインドシェアを多く獲得する傾向にあるのが、ベビーモニターやペットモニター、ホームセキュリティシステム、スマートスプリンクラーなどだという。同氏は、「これらの製品はランダムサンプリングではあるものの、興味深いことに、年老いた親を監視することよりも、ペットのネコをモニタリングすることに興味を持つ消費者の方が多いことが分かった」と述べている。
Argus Insightsの2015年6月のリポートには、次のように書かれている。「GoogleやSamsung Electronicsがスマートホーム市場に多大な投資をしているが、同市場の勢いは鈍化している。アーリーアダプター(初期採用者)は、こうした機器を既に入手しているが、他の一般消費者は、設定や接続がうまくいかずにストレスを感じているのが明らかだ」。
Feland氏は、こうした分野では「よくプラットフォームが重要だといわれている」と説明する。例えば、Appleの「HomeKit」がよい例だろう。「しかし、まだこうしたプラットフォームが普及するまでには至っていない」(同氏)。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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