半導体業界で加速する再編、大規模な人員削減も:今後はアナログ分野に要注目(2/2 ページ)
活発なM&Aが続いている半導体業界では、それに伴う人員削減が懸念事項となっている。とりわけ、大規模な解雇が発生するのではないかと予想されているのが、Avago TechnologiesによるBroadcomの買収だ。
買収に伴う人員削減を振り返る
技術業界では2014年、合併や市場の低迷、経営の悪化などによって、数万人が解雇された。
半導体企業では、Cypress SemiconductorがSpansionを40億米ドルで買収した後、2015年3月に全社員の20%に当たる1600人を解雇した。また、2015年7月には、Qualcommが投資家からの圧力によって全社員の15%に当たる4700人を解雇している。
大幅な人員削減を行ったメーカーは他にもある。2015年6月、Ericssonは研究開発部門に属する1700人を含む2100人の従業員を解雇した。同年8月には台湾のHTCが2250人を解雇した他、中国のLenovoはMotorola Mobilityの携帯電話事業とIBMのサーバ部門を買収した後に、3200人の従業員を解雇している。2014年、Microsoftは1万8000人の従業員を削減する計画を発表したが、そのうちの3分の2は同社がNokiaの携帯電話事業の買収を通じて得た人員だった。
Avago/Broadcomでは大規模な解雇も?
IBSのJones氏は、IntelとAlteraの167億米ドル規模の合併とNXP SemiconductorsとFreescale Semiconductorの100億米ドル規模の合併では、解雇は小規模にとどまるが、Avago Technologiesによる370億米ドル規模のBroadcom買収ではより大規模な人員削減が行われると見込んでいる。
Jones氏は「Avagoは従来、大幅な人員削減を行ってきており、このパターンに変化はないようだ」と述べた上で、AvagoがBroadcomの買収を足掛かりに今後もさらなる買収を準備していく可能性があることを示唆した。
Broadcomは2014年7月に携帯電話機向けベースバンド事業を撤退する際、2500人の従業員を既に削減している。Qualcommの人員削減案も含めれば、並外れた規模の雇用喪失が米国カリフォルニア州の半導体産業を襲う可能性がある。
IEEE-USAの対政府関係部門でディレクタを務めるRuss Harrison氏は、「冷戦終結時に航空宇宙産業の整理統合が進んだ際にも、カリフォルニアは大規模な雇用喪失に襲われた。そのような現象は技術産業の本質の一部ではあるものの、今回は比較的小さいエリアで大量の技術専門家が職を失うことになる点が懸念される」と述べた。
Harrison氏は、企業が人員削減に関してさらに冷淡な姿勢をとるようになる可能性があることを懸念しているという。
Harrison氏は「かつて企業は従業員に対して今よりも責任を負っていたので、企業の一部門に困難が生じた場合は従業員を再教育して他の部門に異動させたものだった。だが、今では従業員は使い捨ての歯車のように扱われる」と述べ、そのようなケースの例として、MicrosoftがNokiaから移ってきた人員を削減したことを挙げた。
Harrison氏は、2015年2月にカリフォルニアの電力会社Southern California Edisonが500人分の雇用を米国からインドに移す計画を発表したことに言及した。同氏は「米国では優秀な人材を見つけられないというのが彼らの言い分だが、MicrosoftやQualcommから解雇された米国人が数千人は、いるはずだ」と述べた。
まだ完了していない買収案件があることを踏まえると、合併に伴う大規模な人員削減は今後もさらに行われるとみられる。Jones氏は「当社は現在、数々の選択肢が検証されていることを把握している」と述べた。
Edelstone氏はJone氏の見解に同意した上で、「極端に大規模な買収がこれ以上行われることはないとみている」と述べた。
アナログ業界に注目
一方で同氏は、アナログ分野での動きにも注目しているという。「従来のアナログメーカーでは、何億米ドルかの年間売上高があれば、好調だと考えられてきた。だが、状況は厳しくなっている。“成功するための事業の規模”は、以前よりも確実に大きくなっている」(同氏)。アナログメーカーに関しては、Analog Devices(ADI)とMaxim Integratedの合併交渉のうわさが報道されたばかりである。
【翻訳:青山麻由子、滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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